第七章108
『来たる大災』
死者が舞い戻る。予告された『大災』が、帝都を呑み込み始める。
❓ 何故だ
唾棄すべき非効率を極めた死が、目の前にある
『星詠み』がもたらした避け難い最期。それははるか昔から覚悟していたことだ。
――自分でなければ、ヴォラキア帝国を救えないという確信があった。
全ては、人生を懸けた計画だった。
鏡を見るたびに力不足と知識不足の焦燥に怒りを覚えたその顔が、血の気を失う。
――『能』による現身は、その命が尽きても元の姿に戻ることはなかった。
もう二度と、あの姿を見ることも、減らず口が鼓膜を叩くこともない。
ヴィンセント・ヴォラキアなら、潔く負けを認めるはずだった。
――そうならなかった。馬鹿げた賭けだった。
それこそ、アベルの唾棄する非効率を極めた死だ。
🛡️ モグロ・ハガネ
棒立ちの体へ、二射目が吸い込まれる
「――そりゃぁ、下策ってもんでやしょうよ」
放たれる二射目の白い光が、棒立ちのアベルへと真っ直ぐに吸い込まれた。
轟音と激震が水晶宮全体を揺るがし、堅牢な壁が破壊される。
( ゚д゚ )
「――巨大な腕、モグロ・ハガネか!」
遠方のモグロに戻るよう指示を出せたのは、玉座に座っていたチシャ以外にいない。
――自分が射抜かれた直後、アベルもまた命を狙われると、そう読んだ。
(╬゚Д゚)
「――っ、モグロ・ハガネ! 俺を外へ出せ!」
(・_・)
「お前、誰。私、閣下、優先――」
(╬゚д゚)
「皇帝は死んだ! 俺が死ねばそれが無駄死にとなろう!」
「遺体――」
( •̀_•́ )
「不要だ! 死者に構うな!」
🐉 魔弾の射手
数ではなく、凄腕を一人だけ用意していた
四方八方から降り注ぐ攻撃。だがこれは数ではなく、凄腕を一人用意したのだ。
――まさしく、『極限飛行』とでもいうべき技量。
灰褐色の髪と、色を失った顔貌に走った罅割れ。
――そして、闇夜のように黒い眼に浮かんだ金色の光。
🐉 バルロイ
(・∀・)
「話しやせんよ、鬼面の御方」
「バルロイ、死んだ。お前、偽物」
(;゚Д゚)
「風を纏わせているな……!」
飛竜乗りを殺すには飛竜から。バルロイの死因も、その例外ではなかった。
( ゚д゚ )
「あの飛竜も、死の向こうより舞い戻ったか!」
🪨 粉砕
揺れる、我慢しろ、と言われる
「揺れる。我慢」
( •̀_•́ )
「構わん、やれ!」
帝国の街路に突き刺した左腕が、引っこ抜いた街を豪快に空へ放り投げた。
左腕を叩き付け、無数の散弾へと変えてバルロイの逃げ道を塞ぐ。
――一つ一つが人間大よりも大きな岩や土の塊だ。
🐉 バルロイ
(>﹏<)
「カリヨン!」
(¬_¬)
「無論、罠だ」
☁️ 竜の良人
メゾレイア『お前! 竜の良人から離れろっちゃぁぁぁ――っ!!』
回転し、噛み砕くはずだったモグロの左腕が、その直前で横槍を喰らい砕かれた。
(╬゚Д゚)
『お、おぉぉぉぉぉ――ッ!!』
――相手が、死から舞い戻ったバルロイ・テメグリフであるのなら。
( ゚д゚ )
「『雲龍』メゾレイア……今の中身は、マデリン・エッシャルトか!」
世界で最も美しい城と呼ばれた水晶宮の庭園が踏み荒らされ、街並みが死んでいく。
💧 濁流
――やがては防壁全体を崩して濁流となって帝都へ流れ込むだろう
はるか離れた場所で発生した、世界が割れるような破砕音。
――帝都全体の水源となっている貯水池の防壁に、千切れた左腕が突き刺さっていた。
――やがては防壁全体を崩して濁流となって帝都へ流れ込むだろう。
(・・・・・・)
「――失敗」
その呟きが聞こえた直後、アベルの体を浮遊感が襲った。
――アベルを包んだ手首から先が、龍に噛み砕かれていた。
🕳️ 同じ毒
――死者に構うなと言ったものが、同じ毒を飲んだも同然だった
(×Д×)
「何かを――」
アベルの目に入ったのは、モグロから引き出された水晶宮の大穴だ。
――玉座の間と繋がった穴、その中を覗くことはできないが、意識は引き付けられた。
――死者に構うなと言ったものが、同じ毒を飲んだも同然だった。
その一秒があったところで、打開の策が見出せたかはわからない。
――だが、その一秒を費やせなかったことは、尽くせなかった全霊の証。
その魂に消えない傷を永遠に刻み込むものだった。
🌟 天命の時
落ちてくる体を、広げた布が受け止める
「引けぇ――っ!」
誰かが落ちてくるアベルの下で重ねた布を広げ、受け止めたのだ。
(・∀・)
「閣下か、それとも閣下か。いずれにせよ、『大災』がやってきます」
(≧▽≦)
「ぼくと一緒に、『大災』に抗おうじゃあーりませんか!」
壊れてゆく街と、それを実現している戦いを背後にしながら男は笑う。
――『星詠み』の自らにもたらされた天命の、確かな実現の瞬間を祝福して。
🕯️ 誉れある行い
一目でわかる。痛みを感じる暇もなかった
うつ伏せに倒れたその体の胸に穴が開き、命脈が途絶えている。
――武官ではないが、一目でわかる。即死だ。痛みを感じる暇もなかっただろう。
(・・・・・・)
「それは、私奴たちの行いを思えば、何とも慈悲深い終わりと言えましょう」
それは明確な裏切り行為だったが、責めるつもりはなかった。むしろ、称賛する。
――欲しいものを得るためであれば、己の持てる力を尽くして挑むのが帝国流。
自らの力を証明してみせた。それは、ヴォラキア帝国の男として誉れある行いだ。
「『大災』と、それがもたらす滅び……いったい、私奴の知らぬ何が帝国に?」
💜 ラミア・ゴドウィン
玉座に、腰を下ろしている人影がある
「――あらぁ、知らされてないのぉ? なら、私が教えてあげましょうか?」
畏れ多くも、皇帝閣下の座るべき玉座に腰を下ろし、見下ろしている人影が。
( ゚д゚ )
「――な」
宰相の立場にあるベルステツが咎める言葉を発せない相手など、国内にもほとんどいない。
――にも拘らず、ベルステツには相手を咎められなかった。
(・∀・)
「――ねぇ、『選帝の儀』はどっちが勝ったのぉ?」
「ヴィンセント兄様? それともプリスカかしら?」
血の気の引いた美しい顔をひび割れさせ、そう言ったのはヴォラキアの皇族。
――『選帝の儀』で敗死したはずの皇女、ラミア・ゴドウィンだった。
第七章108『来たる大災』終了。
「何故だ」
「玉座の男、守れ。閣下、私に命令」
「――さーあ、きましたよ、天命の時が!」
「――チシャ殿、ですか?」
「まだ生きてたなんてしぶといわぁ、ベルステツ」