第七章101
『愛は炎』
灼熱と化した第一頂点。そこにいるのは、母と娘と、母を持たなかった娘だった。
🔥 姫様を取り戻す
戦う理由を、何一つ持っていない
そこには忠義も愛国心も、矜持も誇りも、怒りも功名心も、邪念の一切がない。
――他の『九神将』たちが持つ、戦う理由や意義を何一つ持たない。
それでも、帝都側の有する中で最高戦力として君臨するのが『弐』のアラキアだ。
強さを求められ、それを自分自身ではなく他者のために使うことを強いられる。
――それが『精霊喰らい』の在り方であり、アラキアもその例外ではない。
⚗️ 副作用
――そうした副作用が原因で、人間ではなくなった志望者は多い
火の精霊を取り込めば体温は上昇し、風の精霊は体の内を破る危険性がある。
水の精霊は血の巡りを危うくし、地の精霊は人の体を失う可能性すらあった。
――そうした副作用が原因で、人間ではなくなった志望者は多い。
古の時代、物言わぬ大精霊さえも従えた一人の『魔女』と対抗するために生み出された。
――瘴気を感じ取る鬼族と同様の、戦うための生き物だ。
力を維持するには常に新しい精霊を補充し続ける必要がある。
――その毎回の補充のたびに、心身の自我を奪われる可能性に怯え続ける。
🏛️ 刷り込み
――まさしく、柱こそが『精霊喰らい』の存在意義なのだ
取り込んだ精霊と親和するため、希薄に等しい自意識と自我が要求される。
――ただし、薄すぎる自我は容易に同一化を招き、人でなくなる可能性も高い。
そうならないために与えられるのが柱――そのもの自身を見失わないための『芯』。
雛が初めて目にした相手を親鳥と思う『刷り込み』のように機能し、本能に根付く。
――まさしく、柱こそが『精霊喰らい』の存在意義なのだ。
唯一の完成例とでもいうべき娘は、当時の皇帝へと献上され、
皇帝はそれを自身の血を継ぐ娘の一人に、乳兄弟として与えた。
――かつてのどんな同類たちよりも、手の付けられない強力な存在として完成した。
💔 値段は付けられない
献上品の数々が、命を肩代わりしている
呼吸するだけで肺を焼かれ、渇いていく瞳を潤すための涙滴さえも蒸発する。
――赤い空の下、大地にはヨルナとプリシラのたった二人しか立っていない。
『魂婚術』の効果で、献上品の数々がその命の肩代わりをする。
簪は特別優れた意匠でも高価なものでもない。
――住民たちが、自分の角や鱗、体の部位を使って献上してくれた品々。
そこにあるのは敬愛と信頼だけである。故に、値段は付けられない。
⏳ あとどれだけ
水量の差が、どちらを重く見ているかを示す
(¬_¬)
「簪が砕けたか。先ほどは髪飾りと、じりじりと削られるな、母上」
(╬¬_¬)
「命の肩代わりの残数のように数えられるのは不愉快でありんす」
(・∀・)
「贈り物の一つもしたことのない妾では、愛し子と呼ぶには抵抗があるか?」
( •̀_•́ )
「戯れにも付き合えぬか。――ならば、望み通りに現実的な話をしてやろう」
指一本分ほどに圧縮された水の槍が、雨あられとばかりに降り注ぐ。
――掠めるだけで腕や足を飛ばされかねない致命の一撃だ。
プリシラへ放たれる槍の数は、ヨルナと比べて倍では利かないほど多い。
――どちらにより重きを置いているか、その絶対的な水量からも推し量れる。
😔 後悔
紅の瞳に過ったものが、信じ難い
(・・・・・・)
「妾の手足を飛ばしても、か。――醜悪な希望に魅入られたものよな」
一瞬、その紅の瞳に過ったもの、それが信じ難く。
(・∀・)
「戯れ言を。――この世界は全て、妾にとって都合のよいようにできておる」
ヨルナの前身は、プリシラを産み落としたときの難産に耐えられずに命を落とした。
――その後は『選帝の儀』が執り行われ、娘もまた戦いに敗れて命を落とした。
(´;ω;`)
「悔やんでいるのは、わっちも同じでありんすか」
――何の因果か時間は流れ、巡り合うはずのなかった機が巡った。
🔥 愛しなんし
起こり得ない現象が、二人の間で起こる
激突するはずだった水と雷が掻き消えた。――否、斬り払われたのだ。
ただし、紅の宝剣が描いた剣閃は、それまでよりもさらに洗練された神速だった。
( ゚д゚ )
「これは……」
――魔都の住民たちに施される、ヨルナの庇護の証。
本来、戦う力と術を持たない子らへ授けられ、戦士には付与できない縛りがある。
――だが、ここにその例外が生まれる。
力の大小に拘らず、ヨルナが守りたいと願う『愛し子』の資格を満たした存在。
「プリシラ――」
(´ー`)
「ようやく、妾を我が子と認める気になったか、母上」
( •̀_•́ )
「主さんが往くなら、わっちも同じ地獄を往きんしょう」
――使い手が二人、お互いに条件を満たして、互いの魂を補完し合う。
本来、絶対に起こり得ない現象が起こる。
😢 なんで
百を誰かに譲ることなど、この人にはない
(・・・・・・)
「……なんで」
その瞳に炎を宿し、恩恵を受けるヨルナへと。
――その瞳に炎を宿せず、恩恵を受け取れないアラキアが。
(´;ω;`)
「姫様は、わたしの……っ」
(╬¬_¬)
「勘違いをするな、アラキア」
( •̀_•́ )
「貴様が妾のものであり、妾が貴様のものになるわけではない」
「そして、妾が誰かに百を譲ることなどない」
🪈 覚悟するでありんす
なぜ頭を叩いたのか、と抗議される
( ゚д゚ )
「母上、何ゆえに妾の頭を叩いた?」
(╬゚д゚)
「わっちは我が子を、そうまで居丈高に育てた覚えはないでありんす」
(¬_¬)
「そもそも、母上に育てられた覚えがない」
(・∀・)
「であれば、ようようその機会が巡ってきたということでありんしょう」
( •̀_•́ )
「ようやっと、わっちを見たでありんすな、アラキア一将」
「するべき躾をできずにいたわっちの不徳、プリシラ共々、贖う機会がきたでありんす」
( ゚д゚ )
「何を……」
「早い話――」
その唇から溢れる煙を自らに纏い、娘からの信に瞳を燃やしながら。
第七章101『愛は炎』終了。
「わたしは、姫様を――」
プリシラ