第六章88
『――志を問わん』
雲上と雲下、二つの戦場が、ひとつの問いかけで繋がる。
🛡️ 絶対防御
――最悪の奴を、参考にする
「――E・M・M!!」
大雑把に言えば、スバルとベアトリスの肉体の時間の流れを止めて、外からの影響を受け付けなくするという類の絶対防御魔法。
(-_-#)
「編み出した直後はめちゃめちゃテンション上がったのに、似た能力使う奴が最悪だったせいで、これ使うとかつてないほど生き残るために手段選んでない感がする!」
「その件なら、もう十分話し合ったのよ! ベティーはとっくに目をつむるって決めてるかしら!」
だが、それがなければ、そもそも自分も、ベアトリスも、メィリィも守れない。
⛽ 残量
――穴の開いたバケツから、水が流れ出す
問題は、スバルに残されているマナの残量――そもそも、魔力タンクとしてしか役立たないくせに、スバルのタンクの容量は人並みか、ちょっと落第ぐらいしかないのだ。
この勢いでは遠からず、E・M・Mか治癒魔法の方が打ち止めだ。
「メィリィの治癒魔法を止めるって選択肢がねぇ……!」
「なら、E・M・Mを切るしかないのよ。タイミングと、その後の対処はスバル任せになっちゃうかしら!」
「おうよ、任せとけ。ベア子、お前はメィリィの治療と、俺が指示したことにすぐさま反応する都合のいい精霊としての心構えを頼む!」
(`o´)
「言い方が! 悪い! のよ!」
🚫 八方塞がり
――五秒で、切り札が尽きる
『コル・レオニス』の力で、結果的に一蓮托生感が強くなりすぎていた。
この権能の力でどうしてあそこまで孤独になれたのか、レグルスの生き様が本当にわからない。
「――っ! E・M・T!!」
原理上、それがマナを帯びて放たれたモノであるのなら、この魔法に打ち消せないものはない。
(゚Д゚;)
「E・M・M解除して五秒で切り札切っちまったぁ!」
「土壇場での覚醒に賭けられるほど、自分が信じられねぇ――!」
ただ、諦めが悪いだけだ。ねじ伏せられても、立ち上がる回数が人より多いだけ。
⚜️ 参上
――割り込んだ人影が、虹色に輝く
「――意地と見栄でどうにかしてみせると? それも、実に君らしい決断だがね」
比喩表現抜きに、眩しかったのだ。――その人影が、虹色に輝いていたから。
「――アル・クラウゼリア」
それらを黒い光が減退させ、溢れ出す水が呑み込み、吹き上がる砂嵐が勢いを逸らす。
「――故あって、馳せ参じた。危ういところだったようだね」
🙏 いっぺんしか
🟠いっぺんしか言わねぇけど
「お前……終わったら、他の危ないとこ助けにいけって伝言頼んだだろうが!」
「ああ、聞いたとも。だから、ここへやってきた。すまないが、他の面々と比べても、ここが一番危険だと判断したのでね」
「うるせぇ! その面の傷どうした! レイドは!?」
「完敗だ。気持ちよく勝ち逃げされたよ」
(メ`ロ´)
「だっせぇ! どうせなら勝ってこいよ! きてくれなかったら死ぬとこだったわ、いっぺんしか言わねぇけどありがとよ!」
✨ 開花
――蕾から、開花した
「準精霊たちと仲直りしたのか」
「正確には、彼女たちは蕾から開花し、精霊へと昇華された。それに、仲直りというのも適切ではないね。仲違いしていたわけではないのだから」
六体の精霊と、スマートに契約を結び直したとは、とんだすけこましだ。
「俺はベア子を口説くだけで精一杯だってのに、喰えねぇ野郎だ」
「残念ながら、喰われはしていたのだがね」
(゚д゚)
「笑えねぇよ! お前、ちょっと吹っ切れすぎだろ!!」
🤝 役割
――前へ出て、背後の被害を減らす
「ユリウス! ちょうどいいところにきたかしら! クアを借りるのよ!」
「――、心得ました」
「スバル、シャウラ嬢は私が引き受けよう。それ以外は……」
「自力で何とかしろってことだな、了解」
「いや、ベアトリス様と協力して成し遂げてくれ」
「こういう状況の俺の自力って、七割くらいベア子を計算に入れてるから」
「戻ってくれて助かったぜ……」
「君も、己の価値を見つめ直したようで何よりだ」
(゚Д゚)
「――ラムの反応が、消えた?」
❄️ 絶対零度
――机上の空論を、本番でやる
エミリアは、自分でもビックリするぐらいのマナを保有しているが、その莫大なマナを一度に操れるかというとそういうわけではない。
魔法使いはゲートを通じて、自らの内に溜め込んだマナを使用し、世界に干渉する。
精霊術師は精霊の力を借り、大気中のマナを使用し、世界に干渉する。
ならば、その両方の素養を兼ね備えたエミリアにはできる。
「――アブソリュート・ゼロ」
スバルがそう名付け、実現は難しいかもと話していた机上の空論。
そこでエミリアは一度も成功していなかった勝負に出る。そして、それを成功させる。
真っ向からぶつかり合った青い光と絶対零度、その衝突が世界に空白を生む。
🧊 氷兵
❄️へこたれてなんて、られない
全身からごっそりと力を持っていかれ、体がとても重い。
水を溜め込んだ桶をひっくり返すにも、当然、そのための力がいる。
(≧Д≦)
「へこたれてなんて、られないから!!」
元気とマナは違うものだが、それでも力一杯を自分に言い聞かせることで、眠っている力が湧き上がってくるのを感じた。
勘違いかもしれないが、騙されるのが自分なら、嘘をつくのもたまには悪いことではない。
振り下ろされる一撃を横っ跳びに、続く前足を氷兵が体で止め、その肩を借りてエミリアは大跳躍。
「たあ! てや! そやぁ!!」
🩹 古い傷
――白い鱗ではなく、白い傷跡だった
それは、白くなった鱗というわけではなかった。そうではない。
そこにあったのは、鱗の一枚と見紛うほどに大きな白い傷跡だった。
(・_・)
「古い、傷……」
すでに傷は塞がり、触れられたところで痛みはあるまい。
しかし、『神龍』はただ傷に触れられることを嫌がり、あれほどに悶えたのだ。
それがボルカニカの消せない古い記憶と関わるとわかり、エミリアは息を詰める。
🪜 踏み台
――親指を立てて、笑顔で墜ちる
羽ばたくボルカニカの巨躯が、手を伸ばすエミリアを置き去りに一気に上昇する。
これが、翼のある存在と矛を交える上で、一番やってはならない状況。
「――みんな! お願い!!」
そこから一気に跳躍し、その跳躍した兵の背中を踏み台にさらに跳躍、それを六回繰り返し、最後の一体の背中をエミリアが踏んで。
「ごめんね!」
しかし、落ちていく七体の氷兵は全員、親指を立てて笑顔で墜落していく。
🌪️ 真下から
――一割の可能性を、掴み取る
「――愚か」
空中、逃げ場がない。
失敗、大変、どうしよう、と様々な考えがエミリアの頭を錯綜する。
ただ、諦めるという選択肢だけはない。
エミリアの大好きな人たちは、誰一人、諦めることを選ばなかったから。
「私も、諦めない!」
「――エミリア様!!」
瞬間、真下から吹き上げる猛烈な風が、エミリアの上昇をほんのわずかに手助けした。
🌸 満身創痍
――血だらけで、駆け付けてくれた
上昇の勢いが増したため、その尾撃の狙いが頭からエミリアの胴体へズレた。
体を小さくして、当たる範囲から逃れようと――その、エミリアの爪先を、振り抜かれる尾撃が掠め、凄まじい衝撃にエミリアの体が高速で回転した。
(゚o゚;
「ラムと……!」
遠目に見えるラムは血だらけの満身創痍で、あんな状態でこの場に駆け付けてくれたことに驚きを隠せない。
その、エミリアの前でボルカニカはおかしな様子を見せていた。
尾を振るった姿勢のまま、エミリアの方を見ず、眼下を見ているのだ。
「――パトラッシュ?」
🛝 すろーぷ
――宙に、滑走路を敷く
「い、やぁぁぁぁ――っ!!」
放たれたエミリアは別の氷の足場――否、氷の『すろーぷ』を作り出した。
プリステラで、スバルと一緒にレグルスから逃げる際、その勢いを殺さずに加速する目的で作った代物。
「ちぇやあああ――っ!!」
放たれた矢の如く真っ直ぐ、ボルカニカの喉元の白い傷跡へと届いた。
🖐️ やっぱり
――手が、ぴたりと一致する
落ちてくるエミリアを、足場にされて落ちたはずの氷兵たちが受け止めた。
「きゃ! ……わ、ありがとう!」
(°°;)
「やっぱり!!」
エミリアの手はぴたりと問題の手形と一致。少なくとも、このモノリスの手形はエミリアと手がそっくりな人のモノだ。
❓ 志を問わん
――正しく、問いかけが始まる
「――汝、塔の頂へ至りし者。一層を踏む、全能の請願者」
だが、その問いかけは、最初の、何もかも忘我の果てから出たものと違っているように感じた。
「――我、ボルカニカ。古の盟約により、頂へ至る者の志を問わん」
頂へ至る者の志を問わん。――つまり、てっぺんにつく人の気持ちを聞かれた。
何をしたいのか、何を望むのか、何をするためにここにきたのか。
「――問わん。汝の、志は!」
💗 志
❄️みんな、仲良くして
その問いかけに対して、エミリアの答えはたくさんある。
しかし、今この瞬間、大急ぎでエミリアが望むことは――。
(๑•̀ᴗ•́๑)
「――みんな、仲良くして!!」
☁️ 雲が晴れた
――塔のてっぺんが、下から見える
凄まじい塵旋風が視界を覆い、身の危険を感じて下がったにも拘らず、追撃がなかった。
「――シャウラ!?」
塵旋風を浴びてひっくり返り、砂の上で複数ある足をバタつかせている紅蠍の姿だった。
「――スバル! 見るのよ! 空が」
(゚o゚)
「――雲が、晴れた」
「――やってくれたのか、エミリア」
😢 届かない
――呼びかけても、牙から涎が落ちる
「塔のルールが書き換わって……シャウラ! おい、シャウラ! 聞け!」
「もう、俺たちと戦わなくていいんだ! お前は、もう、自由に……」
「――っ! スバル!!」
今、ユリウスが引き止めてくれなかったら、直撃されていた。
(;゚д゚)
「おい、シャウラ! シャウラ! なんでなんだ、しっかりしろよ!!」
その複眼は揺らめきながら、しかし、ゆっくりと再びスバルを捉えて、その凶悪な牙から涎をこぼした。
🤝 延長戦
🟠俺が、あいつに絆されたから
「助ける、そう決めたんだ。――俺は、あいつを助け出す」
「自覚のない、お師様としての務めと?」
「違う」
「俺が、あいつのお師様だからじゃない。俺が、あいつに絆されたから、そうするんだ」
「ベア子と同じだ。こんな砂の塔でずっと一人でいて、それで俺らと過ごした何日かが楽しかったって泣きじゃくる奴を、どうして放っておけるんだよ」
「……強情だな。だが、そうすべきだ」
「いいや、改めて感心したんだよ。一度、見栄を張ったんだ。ならば、最後まで張り通せなくては、とね」
「メィリィの、峠は越したかしら。あとは――」
「連れ出すの、手伝ってくれるか?」
(๑•̀ᴗ•́๑)
「これでダメなんて言ったら、ベティーはどんな鬼畜なのよ。……まったく、スバルは本当にどうしようもないパートナーかしら」
「俺はもう、身も心もくたくただ。――だから、さっさと助けられろよ、シャウラ!」
――プレアデス監視塔攻略、最後の延長戦が、幕を開ける。
第六章88『――志を問わん』終了。
スバル
ベアトリス
ユリウス
エミリア
ボルカニカ
ラム