リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章84

『うんとこしょ! どっこいしょ!』

エミリアが塔のてっぺんを目指す。手を貸してくれるのは、氷で作った七人だ。

🎨 いめーじ

――お絵描きが、支えになる

――氷を思った通りの形に作り上げるのは、『いめーじ』を固めるのが重要だ。

「大丈夫! 心配ご無用! エミリアたんならきっとできるよ!」

『いめーじ』した武器を作り出す過程で、エミリアはたくさん絵の勉強をした。

勉強の傍ら、ラムは呆れ、オットーは苦笑し、フレデリカやペトラはたまに混ざってくれて、ガーフィールはこうした方がいいと助言してくれた。

みんなからは消えてしまったかもしれなくて、でも、スバルは覚えてくれている思い出。

エミリア

「それを、えいやって勇気に変えるわ――!」

🧊 七人

――一緒に戦うのは、七人のスバル

つまるところ、氷の兵隊たちはエミリアの『いめーじ』しやすい姿で固まっていた。

早い話、エミリアと一緒に戦うのは七人のナツキ・スバルだ。

エミリア

「でも、本物のスバルより力持ちだし、すばしっこいから!」

兵隊たちの強度はエミリアの与えたマナの密度に依存しており、単純な氷像とは比較にならない。

💥 試金石

――狙いが、はっきりする

エミリア

「いって!」

風に穴が開く、とそう表現するしかない奇矯な音がして、直後に先頭の氷兵の上半身が木端微塵に砕け散る。

エミリア

「ごめんね! でも、私じゃなくても狙うってことだわ」

ボケてしまい、『試験』のこともうっかりしてしまっている『神龍』だが、それでも明確に柱へ臨もうとする相手を迎撃する意思が生きている。

あんな姿になってまで、ボルカニカは『何か』を守ろうとしているのだ。

🔱 刺股

――尻尾を、押さえ込む

エミリア

「どっしり構えて!」

腰を落とした三体の氷兵、その背後に彼らを支える氷の壁が生じたからだ。

くる、とわかっていれば対処法はある。

その刺股で突き落とし、『神龍』の行儀の悪い尾を床に押さえ込む。

ボルカニカ

「――汝、塔の頂へ至りし者。一層を踏む、全能の請願者」

腰から上が綺麗に消滅し、下半身だけを残して氷兵が崩れる。

それをしたのは、身動きを封じられて本気になった尾の逆襲――ではなく、爪だ。

♻️ 何度でも

――何度でも、立ち上がる

エミリア

「尻尾も手足も元気なら……もう! なんで大事な頭だけポカンとしちゃったの!」

ボルカニカ

「――我、ボルカニカ。古の盟約により、頂へ至る者の志を問わん」

エミリア

「それはわかったか、ら――!」

エミリア

「大丈夫! 何にもわからなかったわけじゃないもの」

つまり、氷兵はエミリアが力尽きるまで何度でも立ち上がることができる。

それこそ、まるで本物のナツキ・スバルのように。

🔥 息吹き

――音が、殺される

エミリア

「――それより上の、塔のてっぺん!!」

直後、柱へ指を届かせようとしたエミリアの足下を、静かな熱波が掠めた。

――否、それは静かだったのではない。あまりの威力と熱量に、音が死んだのだ。

各所から燻るような白い煙が上がり、存在したはずの氷兵は残骸も残せていない。

――『神龍』ボルカニカの息吹きが、全てを焼き払ったのだ。

エミリア

「尻尾も手足も元気で、火まで吹けるのに!」

🪽 飛翔

――翼を、広げる

エミリア

「わかった! わかりました! わかったから……ぁ」

ゆっくりと、『神龍』の双眸が上を、金色の瞳がエミリアを映したのだ。

ボルカニカ

「――我、ボルカニカ。古の盟約により、頂へ至る者の志を問わん」

そう言いながら、ボルカニカがその青い両翼を広げ、その場に立ち上がっていた。

エミリア

「大変――っ!」

🪜 足場

――足場を、作って駆け上がる

エミリア

「私! 一層より上にいくつもりだから、あなたと敵じゃないかも!」

ボルカニカ

「――我、ボルカニカ。古の盟約により、頂へ至る者の志を問わん」

エミリア

「んやうっ!!」

『アイスブランド・アーツ』の応用――柱にしがみついてよじ登るよりも、その柱の側面に足場を取り付けて、それを駆け上がる方が速度を上げられる。

エミリア

「手足も自由になるか……きゃんっ!」

🤝 氷兵の道

――手を、貸してもらう

エミリア

「まだまだ……すごーく、頑張れる!!」

両手は使えない。だが、足は動かせる。上は目指せる。

足場の役目を果たしつつ、それでは終わらないものを――。

エミリア

「――わかった!」

エミリア

「お願い、兵隊さん!」

柱に上半身を生やすだけなので、足を作らなくていいから七体よりも数を増やせる。

エミリア

「えい! たあ! そや! よいしょ!」

💔 砕ける

――掴んだ手が、折れる

あと十メートルほどで塔の最上層へ辿り着けるはずだが、柱の上部はネズミ返しのように反り返った状態になっている。

ボルカニカ

「――我、ボルカニカ。古の盟約により、頂へ至る者の志を問わん」

掴んだ手が肩口からへし折れ、支えを失ってエミリアの体が落下する。

それを、目つきの悪い氷兵は必死に止めようとしたが、もう片方の手は届かない。

🐉 背中

――龍の背に、落ちる

エミリア

「きゃあ!」

その声の近さから、エミリアは遅れて理解した。――自分が、『神龍』ボルカニカの背中に落ちたのだと。

その上、ボルカニカはただ、空を自由に飛んでいるだけなのだ。

ただ、しがみつくエミリアを振り落とそうと、勢いをつけて飛んでいるだけ。

エミリア

「――スバルたちに、会いにいけなくなっちゃう」

👁️ 目を開ける

――目は、開けていなくてはならない

まるで死んでしまうみたいな心の準備だが、そうではない。

エミリアが大切な人たちを思うのは前を向くためだ。

人は恐怖や不安に押し潰されそうなとき、目をつむってしまうものだ。

だけど、エミリアが瞼の裏に描いた大切な人たちは、そんなときこそ前を向く。そんなときこそ、目を閉じることをしない人たち。

エミリア

「――あの、へんてこ」

🤍 白い鱗

――一枚だけ、白い

その、偉大な龍の顎の下、青い鱗がびっしりと生え揃った中に、一枚だけ白い鱗がある。

『ダメだよ~、リア。そんなにこそばゆいことされたら、集中が乱れちゃうでしょ?』

エミリア

「もしかしてなんだけど、あなたも、首をくすぐられるのが苦手じゃない?」

エミリア

「――だよね、パック」

エミリア

「――兵隊さん」

――初めて、『神龍』の繰り言以外の声をエミリアは聞いた。

🐲 逆鱗

――触れては、ならない鱗

――逆鱗、という言葉がある。

神話の存在である龍の首には、触れてはならない鱗が一枚だけあり、それを『逆鱗』と呼ぶというモノだ。

無論、そんな異なる世界の故事成語の成り立ちなど、エミリアは知る由もない。

こちらを振り落とさんと勢いよく飛び回る相手の集中を乱し、隙を作るのが目的だった。

エミリア

「きゃああああ!!」

エミリア

「パックは喜んでくれたのに……」

🏔️ 最上層

――辿り着いて、しまった

エミリア

「――あ! ここって」

周囲にあるはずの六本の柱がないのは、エミリアがそれらの柱の先端よりも上へ到達した証。

ボルカニカの背中から振り落とされる形で、辿り着いたのだ。

エミリア

「わ、やった! 頑張った甲斐があったわ!」

エミリア

「お願いだから、私にもわかる問題を出してね……」

🖐️ 六つの手形

――手形が、押されている

あった。一段下の、六本の柱にはなかった特徴が。

エミリア

「――誰かの、手形?」

プレアデス監視塔の最上層、中央の柱の根元にあったのは黒いモノリス。

――六つの、それぞれ異なる男女の手形が、押されていた。

第六章84『うんとこしょ! どっこいしょ!』終了。