リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章78

『角四つ』

盤面の角を四つ取られている。それでも勝ちにいく配置を組む。

⬛ 角四つ

――角を、四つ取られている

スバル

「――いいか? 今、この塔はヤバい状態にある。どのぐらいヤバいかっていうと、オセロで角を四つ取られてるみたいな状況だ」

ラム

「それは……かなりマズいわね」

こちらの世界でも再現するのが比較的簡単な部類だったので、わりと早い段階でロズワール邸に持ち込まれ、特にエミリアからの大絶賛を受けていた。

ベアトリス

「角四つなんて、とんでもない状況かしら……ハンデにしても、やりすぎなのよ」

エミリア

「そんなに角もらったら、てんてこ舞いになった私でも勝てちゃうかも……」

スバル

「てんてこ舞いってきょうび聞かねぇな……」

エミリア

「――! スバル、今の、もう一回言って」

スバル

「あとでね。あとで」

🌟 四つ目

――四つ目を、言いあぐねる

四つ目の角に触れようとして、一瞬、続ける言葉に迷った。

エミリア

「仲間って、シャウラに何かあったの?」

エミリアの『記憶』の有無と無関係に、そこは認識に違いがないのだ。

すなわち、彼女たちの中で、シャウラの立場は友好的なモノと、そう刻まれている証。

スバル

「馬鹿か俺は。いや、馬鹿だ俺は」

一つけなしたら一つ褒める。理想は、一つけなしたら百褒める。

真の理想は、一つもけなさずに一万褒めること。

📜 決まり事

――破られたら、牙を剥く

ラム

「ええ、あったわね。『試験』を終えず、『試験』の決まりを守らず、書庫に敬意を払わず、塔を傷付けず……それらが決まり事の違反、だったかしら」

スバル

「その、いくつかの決まり事……これを破ると、四つ目の角が出現する。そしたら……」

ラム

「当人が言ってた通り、ラムたちに牙を剥くと。――厄介ね」

ベアトリス

「あのとぼけた娘、あれで相当な実力かしら。遠くから撃たれて手も足も出ないよりマシでも、敵に回ったらマズいのは変わらないのよ」

エミリア

「でも、相手はシャウラなんでしょ? 何とか、話し合いで説得できないの?」

スバル

「その平和的な解決は俺も望むとこなんだけど、シャウラが交渉のテーブルにつくのが難しそうなんだ」

⚜️ 二層

――上で、始まっている

ラム

「対処している角は二つと言ったわね。魔獣の群れをメィリィが押さえているのはわかるとして、あと一つは?」

スバル

「――ユリウスだ。二層で、敵と戦ってる真っ最中」

エミリア

「二層って……まさか」

スバル

「ああ、そのまさか」

――ユリウス・ユークリウスと、レイド・アストレアの再戦は始まっているのだ。

🧭 運命

――運命は、存在する

だが、幾度も『死』を積み重ね、多くの可能性を渡り歩いてきたスバルにはわかることがある。

――それは、腹立たしいことだが、『運命』は存在するということだ。

まるで、先に『運命』の提示した結果があり、全ての過程がそこへ行き着くような。

しかし、それは同時に、光明を意味するとは言えないだろうか。

スバル

「レイドとの決着はユリウスに任せろ。俺たちは、残りの三つに対処する」

🧩 振り分け

――仕分けが、一番の見せ場

スバル

「とにかく、塔の状況整理は以上! あとは最適な場所に最適な人材を振り分ける。この仕分け事業が、ナツキ・スバルの一番の見せ場だぜ!」

ベアトリス

「地味地味すぎるのよ……」

スバル

「地味でも大事な仕事なの! これがいぶし銀な活躍ってやつだよ。俺にしかできない仕事……そう、俺にしかできないことだ! これが俺の戦い……痛い!!」

ラム

「いいから、早く分けなさい」

スバル

「ワンフォーオール、オールフォーワン。全員が一丸とならなきゃ勝ちは掴めない。誰かが一人欠けるのも嫌だ。誰も欠かさないで勝ちにいく。だって俺たちは……」

エミリア

「――失わせないで、取り戻すためにこの塔にきたんだもんね」

スバル

「そゆこと」

🌸 手を抜かない

ラムは、手を抜かないわよ

ラム

「――バルス」

スバル

「俺を壊さないように気遣ってくれるなんて、らしくないじゃねぇか、姉様」

ラム

「羽虫を掌で観察しようとしたら、力を入れないように苦心するでしょう。それと同じことよ。……羽虫なんてわざわざ掌に乗せないわ。おぞましい」

スバル

「自分で言って自分で否定するなよ」

ラム

「――バルス。ラムは手を抜かないわよ」

ただ、ラムが立って呼吸しているだけで、十分以上に辛いと弱音が吐ける。

だが、それは彼女が常日頃、味わい続けている苦しみなのだ。

スバル

「姉様は優しすぎます、か」

🔵 一番心配

🌸一番心配してるのは、ラムよ

スバル

「オットーもいい線いってたけど、あいつはうっかり転んで押しかねない不安があるからな……適切に使うって意味なら、姉様が一番確実だ」

ラム

「ハッ! おだてても無駄よ。……しっかり、ベアトリス様とエミリアを気遣ってあげなさい。バルスはどうなってもいいわ」

スバル

「はいはい、わかってるよ。レムのことは……」

ラム

「――レムを、この世で一番心配してるのはラムよ」

ラム

「バルスはバルスなりに、世界で二番目に心配しているがいいわ。それで、髪の毛一本分の傷もレムに付ける気はなくなるでしょうから」

スバル

「……そりゃ、死にたくなるからな」

ラム

「バルス、せいぜい気を付けなさい。死んだらレムと会えなくなるわよ」

スバル

「ああ、俺も愛してる」

🙌 心強い

――今が、一番視界が晴れている

エミリア

「ううん、何でもない。ただ、なんだかすごーく心強いって思って」

スバル

「――。そりゃ偶然、実は俺も同じ気持ちなんだよ」

不安より、期待が大きい。預けるより、任せる方が力強い。縋るより、信じる方が前を向ける。

スバル

「仲間を信じるのは当然だし、その仲間に頼る自分のことも信じられる。この砂だらけの塔にきて、今が一番、視界が晴れてるぜ」

ベアトリス

「――その顔、ベティーの一番好きなスバルかしら」

エミリア

「ベアトリスは覚えてないみたいだけど、私もおんなじこと思ってたの」

🌟 餓馬王

――露台が、血の海になっている

かつてこの魔獣を見知ったモノは、それとは異なる名前を付けた。――『餓馬王』と。

白い光が餓馬王の体内で光の剣山と化し、内側から魔獣を八つ裂きに引き裂く。

そうした登攀者を次々と撃墜し、露台はもはや血の海と化していた。

それだけの殺戮を成し遂げ、シャウラは息一つ乱していない。

👁️ 限界

――誰かが、ルールを破った

シャウラ

「ぐ、ううううう……ッ!」

そこから見える黒目がちの眼球が分裂し、赤々とした脈動を始めているのだ。

シャウラ

「誰かが、誰かがルールを破った……ッス……」

🧣 エキドナ

「マズいな。彼女は限界だ。メィリィ! 君の方は……」

メィリィ

「見ての通り、飛んでくる子たちの相手で手一杯よお! これで裸のお姉さんまで戦えなくなったら、絶対の絶対、手が足りなくなるからあ!」

🧣 エキドナ

「だろうね。これは、かなり手厳しいな」

⛓️ 被造物

🧣皮肉な、話だ

先の彼女の言葉が事実なら、プレアデス監視塔における決まり事が破られた。

それに抗っているのは、シャウラが本気でナツキ・スバルを傷付けたくないと、心底願っているからだ。

🧣 エキドナ

「……皮肉な話だ」

この監視塔の番人として居続けていたから、彼女は会いたい誰かと再会できた。

だが、この監視塔の番人として在り続けているから、彼女は会いたい誰かを傷付ける命令に逆らえない。――まさしく、被造物の悲哀だ。

🙏 命じてください

🌟命じて、くださいッス

スバル

「――シャウラ!」

シャウラ

「お師様……?」

シャウラ

「お師様、あーしに……あーしに、命じてくださいッス……!」

シャウラ

「誰かが、ルールに違反したんス。この、ままだと、あーし……お師様を……! そうなる前に、でなきゃ、お師様を、お師様を……っ」

スバルが命令さえすれば、大サソリの脅威は取り除かれると言っていい。

✊ 運命様、上等だ

――死ねとは、言ってやらない

スバル

「シャウラ」

シャウラ

「は、い……あーし、お師様のためなら……」

スバル

「何度も言ってるが、俺にはお前にお師様呼ばわりされる心当たりがねぇよ」

スバル

「だから、俺がお前のお師様かどうか、それを認める認めないの話は後回しだ」

スバル

「俺は、お前に死ねなんて言ってやらない。俺は、お前を泣いたままになんかさせてやらない。俺は、お前の四百年をここで終わらせてなんかやらない」

この世界の奴らは気が長すぎる。四百年も、一途に誰かを待ち続けるんじゃない。

首根っこを掴んででも、会いたい誰かを引きずり出すべきだ。

スバル

「俺がそれをしてやる! 唯々諾々と、誰かの言いなりになんてなってたまるかよ! 運命様、上等だ!」

💗 愛してるッス

🌟お師様、愛してるッス

この瞬間、少なくとも彼女にとって重要なのは、塔の決まり事でも、内から爆ぜそうなぐらいに膨れ上がる衝動でもなく、

シャウラ

「お師様……愛してるッス」

たぶん、四百年待ち焦がれた相手への、抑え切れない愛の情動だけだった。

白く細い手が肥大化して大鋏へと変わり、女性的な豊満な体が爆ぜ、テープの逆再生のように溢れる血肉が舞い戻り、肉体を組み替える。

🦵 えええええい

❄️真横から、蹴り飛ばされる

エミリア

「――えええええいっ!!」

凄まじい威力が突き込まれ、大サソリの巨体が床から外れて吹っ飛ぶ。

ベアトリス

「――ムラク」

陰魔法の一種である『ムラク』は、対象にかかる重力を操作する魔法だ。

大サソリの重量が埃のように軽くなれば、その図体が見た目通りの動きができなくなるのは至極当然。

メィリィ

「羽土竜ちゃん!」

📨 言伝

――言伝は、特にない

🧣 エキドナ

「ひょっとして、『記憶』が戻ったのかい?」

スバル

「話が早い! けど、なんでわかった?」

🧣 エキドナ

「わかるさ。君の隣で、ベアトリスがそれだけ自慢げな顔をしていればね」

スバル

「エキドナ、お前の担当は中だ! ひとまず、二層で戦ってるユリウスのところに合流しろ!」

🧣 エキドナ

「――ユリウスに言伝は?」

スバル

「いや、特にねぇよ」

スバル

「――俺の言うべきことは、少し前の俺と、その前の俺が全部言ってる。今さら付け加えることなんてない。あいつは、ユリウス・ユークリウスなんだぜ」

蘇ったレイド・アストレアを斬るのは、ユリウス・ユークリウスだ。

🔚 ケリをつける

――今回で、決める

スバル

「エミリアたん! 打ち合わせ通りに! エミリアたんが頼りだ!」

エミリア

「ええ、任せて! スバルこそ、死んじゃダメだからね!」

リスタート地点が変わっていないなら、スバルが舞い戻るのはルイ・アルネブを魔女因子ごと自分から分離する前の段階だ。

そこへ舞い戻れば、いったい、どんな不都合が発生するのか、スバルにも誰にもわからない。

スバル

「――今回で、ケリをつける!」

🏠 引きこもり対決

――三人で、四百二年

メィリィ

「それでえ? 全然説明がなくってちんぷんかんぷんなんだけどお、わたしにはちゃあんと説明してくれるのかしらあ?」

スバル

「悪ぃが付き合ってもらうぜ、メィリィ。俺とベア子とお前の三人で、魔獣の群れと大サソリ――角二つを、押さえ込む!」

メィリィ

「それ、説明になってないからねえ!」

ベアトリス

「――くるのよ!」

スバル

「で、四百年の引きこもりか。引きこもり対決だ。あっちは一人で四百年、こっちは二人で四百一年だぜ」

メィリィ

「三人で、四百二年の方が正解じゃないかしらあ」

スバル

「つまり、俺たちが勝つ!」

ベアトリス

「勝つってところ以外、意味がわからんかしら!!」

スバル

「――本気で頼んだぜ、エミリアたん。君が、全部の鍵だから」

第六章78『角四つ』終了。