リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章77

『反撃の狼煙』

戻ってきたスバルが、まず最初にすることは、みんなを拾い集めることだった。

📣 名を呼ぶ

――背中を、見つける

細く、しなやかな背中が瞳に飛び込んできて、思わず心臓が爆ぜそうになった。

スバル

「――ライ・バテンカイトス!!」

その一瞬だけでも、相手の注意が逸れれば儲けものだ。

込み上げる恋心を燃料に、今なら空だって飛んでみせる。

そんなスバルの心構えは、とっさに振り返った紫紺の瞳に奪われて砕け散る。

⭐ 一の騎士

――やる必要は、なかったが

エミリア

「危ないから待って! えっと、私のこと、その、わからないかもしれないけど、あっちが敵! ここは私に任せて!」

本当に思う。――ここに最初に辿り着いたのが、自分でよかった。

スバル

「――大丈夫だよ、エミリアたん」

右手で天を指差して、腰に手を当ててポージング。

やる必要はなかったが、やってやったら覚悟が決まる。

スバル

「――俺の名前はナツキ・スバル。エミリアたんの、一の騎士!」

エミリア

「スバル――っ!!」

🤗 バカ

❄️すごーく、バカ

スバル

「え、エミリアたん!? 急でいきなりでビックリしたし、めちゃくちゃ柔らかくていい匂いするね! シャンプー変えた!?」

エミリア

「スバルのバカ! もう、すごーくバカ! いっぱい、いっぱい心配したの! それなのにあんな風に……バカ! バカバカ!」

スバル

「すげぇ馬鹿って言われてる! いや、言い訳できないんだけど……」

スバル

「心配かけてごめん。でも、俺、戻ったから。……復活した? くっついた? 完全体ナツキ・スバルになったっていうか、とにかく、大丈夫だから」

🫱 一緒になれた?

❄️あのスバルは、どうなったの

エミリア

「ちゃんと、一緒になれたの?」

エミリア

「記憶がないときのスバルも、スバルだったから。だから、スバルが全部思い出してくれても、あの、短い間でも一生懸命だったスバルは……」

スバル

「――ああ、うん。大丈夫だよ」

――ああ、ならば、簡単なことなのだ。

スバル

「俺の中にも、エミリアたんの中にも、『俺』がいたことは確かに残ってる。だから、本当に大丈夫だよ、エミリアたん」

エミリア

「……うん」

🍴 配膳

――テーブルが汚くては、興醒め

ライ

「――そろそろさァ、感動のご対面には十分かい?」

スバル

「ああ。わざわざ、律義に待っててくれるとは思わなかった。悔い改めたのか?」

ライ

「『喰い』改めるなんてとんでもないッ! ただ、僕たちってば『美食家』だからさァ。食の喜びを知るものとしちゃぁ、配膳にもちゃぁんと気配りしたいって話なんだよ。テーブルが汚くちゃ興醒めだ。でしょ?」

スバル

「なるほど、納得した。俺はてっきり……妹が無様にやられたから、ビビッてんのかと思ったんだよ」

笑みは一瞬で掻き消え、代わりに浮かび上がるのは灼熱の赫怒だ。

🦵 合わせ技

❄️私もいるの、忘れないで

ライ

「お前に、俺たちのルイの何がわかる――ッ!!」

スバル

「何にもわかんねぇよ。こっちは一方的に体に入り込まれてただけだ」

エミリア

「――私もいるの、忘れないでよ、ね!」

直撃の瞬間、エミリアの氷結戦闘技法『アイスブランドアーツ』が発動し、相手に突き刺さる爪先を氷のブーツが補強しているおまけつきだ。

スバル

「決まった! これが俺の煽りと、エミリアたんの可愛い殺意の合わせ技だ!」

エミリア

「それって褒めてるの?」

スバル

「褒めてるよ! 最高! 可愛い! 結婚したい!」

エミリア

「けっこ……もう、ふざけないのっ」

🖤 五分五分

――影が、くるかどうか

影が全てを呑み込む一大事は、以前、『聖域』でも出くわした災厄の再現だ。

あの影が全てをご破算にするのは、『死に戻り』が外部に大きく漏れた場合。

つまりは、スバルの内側にルイ・アルネブがいたことが原因だったはずだ。

そのルイが排除された今、あの影が塔を呑み込むかどうかは五分五分、といったところだ。

だから、それを当てにして、事態をゆっくり進める選択肢はないが。

🤝 信じられる

❄️まだ何も、言ってないのに

スバル

「エミリアたん! 俺に考えがある!」

エミリア

「――! わかったわ! じゃあ、それをしましょう!」

スバル

「まだ何にも言ってないけど!?」

エミリア

「スバルの考えなら、一生懸命考えてくれたあとに出てきたものだもの! 私が今から色んなことを考えて答えを出すより、ずっと信じられるから!」

スバル

「――ああ、クソ! 嬉しいこと言ってくれちゃって!」

🪳 しぶとい

――逃げても、塔からは出ない

スバル

「とりあえず、エミリアたん、あいつにもう一発ぶち込んで!」

エミリア

「えい!」

エミリア

「スバル! さっきの大罪司教が……」

スバル

「ちっ、しぶとい野郎だ。けど、ノーダメージってわけじゃないはず」

スバル

「心配しなくても、あいつは塔から出ていったりしないよ。しこたまルイのことで……妹のことで煽ってやったからね。勘違いシスコン野郎は引き下がれない」

スバル

「臨機応変、柔軟に対応を変えられる奴は、そもそも大罪司教なんかになってねぇ」

📡 スバナビ

――みんなの場所を、辿る

エミリア

「ん、わかった! だけど、みんながどこにいるかは……」

スバル

「――それをスバナビするのは、俺の役目だよ」

自分の脈打つ心の臓の在処を意識し、その自分自身を中心に鼓動を広げるように知覚範囲を拡大する。

ただ仲間の存在を感じることだけに特化したそれは、今のスバルたちにとって最も価値のある権能だ。

スバル

「――まずは、俺の可愛いパートナーを回収する!」

🤒 引き取る

――拒否は、言わせない

エミリア

「スバル、大丈夫? 顔色が悪いけど……」

スバル

「ん、ああ、大丈夫大丈夫。いや、ちょっと強がり言ってるけど、まだ平気。このぐらいなら、全然頑張れるよ」

今のスバルを苦しめているのは、もっと単純明快な原因がある。

――ラムの負担、彼女が常日頃から味わっている苦しみを、先んじて引き受けているためだ。

スバル

「無断で傷を引き取るの、ラムは絶対喜ばないだろうけどな……」

なので、ラムの負担は勝手に背負う。彼女に拒否は言わせない。

🟣 ベア子

🟣頭の中が、てんやわんや

スバル

「ベア子!!」

エミリア

「ベアトリス!」

ベアトリス

「――っ!? す、スバルと、誰だかわからん娘がきたのよ!?」

スバル

「おお、ベア子! ベア子、お前、軽いなぁ! 可愛いなぁ! 賢い顔してるなぁ!」

エミリア

「見て、ベアトリス! スバルが全部思い出してくれたのよ!」

ベアトリス

「ま、待つかしら! 待つのよ! 知ってる記念日と知らない記念日が同時にきたみたいで、ベティーの頭の中がてんやわんやかしら!」

🦸 スーパーマン

――全部、思い出したのか

ベアトリス

「……スバル。ホントに、全部、思い出せたのよ? ベティーのことも、ベティーとどんな風に過ごしてきたのかも、全部?」

スバル

「ああ、そうだよ。そんな不安そうな顔すんな。全部思い出したし、何ならいくらでも捏造してやれる。俺とお前の、あることないことヒストリアだ」

ベアトリス

「ないことを捏造する必要はないかしら! ああもう!」

ベアトリス

「スバルは本当に、ベティーを振り回してばっかりなのよ」

スバル

「お前を退屈させない契約者、ってのが契約条件だったはずだからな。それと、お前は俺のこと、スーパーマンじゃないって言ってたけど……客観的に見て、俺って結構、スーパーマンじゃね?」

ベアトリス

「調子に乗るんじゃないかしら!」

🐉 尾撃

――愛竜にも、心配をかけた

ラム

「ずいぶんと、雪解けの早いこと。所詮、バルスらしい空騒ぎといったところね」

スバル

「けど、満を持して戻ったぜ。みんなのために百五十パーセントの力が出せる男、ナツキ・スバルをどうぞよろしく」

スバル

「見逃しても? ……ばんぐらでぃしゅっ!?」

ベアトリス

「うきゃーなのよっ!?」

エミリア

「パトラッシュちゃんも、スバルが戻ってくれてすごーく喜んでるみたい」

スバル

「ホント、お前にゃ助けられるぜ。愛してる」

スバル

「……いつもみたいに、ぶっ飛ばさないのな?」

ベアトリス

「冗談か本気かくらい、この地竜にもちゃんとわかるってことかしら」

🔵 逃がしてくれない

――だから、戻ってきてしまう

無論、眠り続ける彼女から、スバルの『記憶』が戻ってきたことを喜ぶ声を聞くことはできない。

あの白い世界、まさしく『暴食』の毒牙にかけられそうになった瞬間、どうしようもない弱虫を蹴り上げる声がなかったら。

本当に彼女という存在は、ナツキ・スバルが自分を忘れても、逃がしてくれない。

だからまた、都合四十回の『死』を乗り越えて、戻ってきてしまう。

💪 ただのエミリア

❄️私はエミリア、ただのエミリアよ

スバル

「エミリアだよ。覚えてない、っぽいな」

ラム

「……さっき、ラムたちを逃がしてくれた相手、というのは知っているわ。でも、それだけで、それ以上のことは思い出せない」

ベアトリス

「ベティーも、同じなのよ。……『暴食』の権能の効果、ってことかしら」

エミリア

「はい! 私はエミリア、ただのエミリアよ。色々言いたいことはあるけど、ベアトリスともラムとも、おんなじ方向を見てる家族だから!」

エミリア

「それだけわかってくれてたら、今の私は大丈夫。スバルが覚えててくれてるってわかってから、なんだかすごーく調子がいいの」

その、あまりに堂々たる振る舞いにスバルだけでなく、ベアトリスも絶句する。

🏠 我が家

――やられっ放しは、嫌い

ラム

「エミリア、と言ったわね。不思議なことに、あなたを見ていると、ラムの頭の片隅がやけにむず痒く感じるの。……レムのときも、同じことがあったわ」

ラム

「あなたを見ていて、感じるこの頭の疼きが、ラムとあなたの関係の答えだわ。だから、安心なさい。――ラムは、やられっ放しは嫌いなのよ」

エミリア

「――。それは、私もおんなじよ。絶対の絶対、やり返すんだから」

ラム

「ええ、億倍返しね」

スバル

「多いな!?」

スバル

「あの最悪の三兄妹が始めやがった大食い祭りを、俺たちの絆でメタメタにしてやるぜ」

スバル

「――バラバラだけど、帰ってきた我が家感がある!」

第六章77『反撃の狼煙』終了。