第六章20
『シャウラ ≠ 賢者 = フリューゲル』
『賢者』の名は、木を植えた男のものだった。そして塔の階層には、七つ目の名前がある。
🌳 覚えがある
その名前を、スバルは知っている
――偉大なる『大賢人』フリューゲル。
その発言に、スバルたちは揃って顔を見合わせ、微妙な雰囲気に包まれた。
「あれ? なんスか、その反応。あーし、なんか変なこと言ったッスか?」
「いや、だって、なぁ?」
頭に付く冠は残念ながら違うものだが、スバルはその名前に聞き覚えがある。
異世界に召喚されて以来、たった一度だけ運命の交わったことがある人物の名だ。
なにせ彼の人物の功績のおかげで、命を救われた経験があるのだから。
「フリューゲルの大樹……の、フリューゲルさんだよな?」
🪓 切り倒した
その木は、もうない
「聞いたことないわあ。タイジュって、木のこと?」
「そうだ。あー、ルグニカ王国のリーファウス平原ってところに、ものすごいでかい木が生えてて、それがフリューゲルの大樹って呼ばれてたんだ。そりゃもう、雲に届くんじゃないかってでかさで、男心がくすぐられるもんがあったな」
「へえ、そうなんだあ。そんなに言われると、見てみたい気がするわあ」
「すまん。あれは俺が切り倒した」
(#・ω・)
「お兄さんのいけず!」
――フリューゲルの大樹は、一年前の『白鯨討伐戦』の切り札になった代物だ。
最終的には大樹を切り倒し、白鯨を下敷きにすることで動きを封じた。
「現在は『フリューゲルの大樹跡』として、切り株だけが残っていますよ。重要な史跡を保護する形ですが、以前と同じになるのは数百年後のことでしょう」
📉 見劣り
功績が、『賢者』に釣り合わない
「そういや、確かに『賢者』フリューゲルって呼ばれてるとは聞いてたな」
「だけど、何したのかイマイチわからない『賢者』なのよ。……それで『賢者』扱いされてたことが、そもそもおかしいと言えばおかしいかしら」
「ただ功績だけで考えると、『賢者』の呼び名に見劣りする成果なのは事実だわ。よほど自分の功績を喧伝するのがうまかったのか……バルスみたいな奴ね」
(ノ゚Д゚)ノ
「俺がいつ、自分の功績を誇張しましたかね!」
🔀 なすりつけ
アナスタシアが、逆を疑う
「確かに、言い伝えられてる限りの話やと、フリューゲルさんは『賢者』って呼ばれるんに不足かもしれんけど……真の『賢者』扱いされてたシャウラさんがこういう人やった以上、そういうことなんちゃうかな」
「そういうことってーと?」
「伝わってる功績か逆……んー、違うかな。逆や言うより、偏ってる。ううん、意図的になすりつけてるぐらいの方が可能性高いかもしらんよ」
(゚д゚)
「つまり、フリューゲルさんが自分のしたことを、シャウラさんがやったみたいにしてるってこと?」
「あーしにも正直、お師様の考えはわかんないとこが多いッス。でも、お師様は目立つのはあんまり好きじゃない人だったッスよ。なんで、面倒そうな噂話の矛先をあーしに向けて逃げるって、お師様らしいかな~って思うッス」
✍️ 参上
名前が残った、理由
「目立ちたくない人間が、フリューゲルの大樹なんて名前の木は植えないと俺は思ったりするんだが……」
「スバル、それは考え違いだ。フリューゲルの大樹といえど、何も植えられた当初から大樹だったわけではない。年月を経て、成長することであれほどの偉容を得るに至ったんだ」
「……ぐうの音も出ねぇよ」
「隠す気があるんなら、そもそもフリューゲルって名前が残るのも避けろって感じがするけどな。意外と抜けてるのか?」
「本で読んだけど、フリューゲルさんの名前がわかった理由って確か……あの大樹の上の方に、『フリューゲル参上』って刻んであったからよね?」
(ノ゚Д゚)ノ
「抜けてるどころの話じゃねぇんだけど! 修学旅行生かよ!」
「それが時を経て、別の『賢者』の口から正しいと証明されたことになる。そう考えると……ふむ。歴史の欠落を埋める場に立ち会って、少しばかり胸が弾むな」
「歴オタみたいなこと言い出すなよ……」
🚫 無駄足
目的が、果たせない
「でも、大昔の『賢者』が実際はフリューゲルだった……ってわかっても、それで何かが大きく変わるわけじゃない、のよね?」
「いいや、エミリアたん。実はでかい問題があるぜ」
「元々、俺たちの目的は全知って評判の『賢者』さんから色々話を聞くことにあったんだ。だけど、噂の『賢者』さんは実は別人で、残ってるのは見るからに頭空っぽなこいつだけってことは……」
「あー、お師様~、頭振らないでほしいッス。カラカラ音がするッス」
「そもそもの、俺たちの当初の目的が果たせない。――『賢者』がいないなら、ここに足を運んだのは無駄足ってことだ」
一ヶ月以上の時間をかけて、スバルに至ってはすでに四度も死亡した。
それほどの苦難を乗り越えて辿り着いた塔には、名ばかりの番人が残るのみ。
歴史の真実、『賢者』の実態。そんなもの、スバルには何の価値もない。
スバルが欲するのはただ、大事な人間を救う手立てそれだけなのだから。
💡 八方ふさがりじゃない
エミリアが、肩に手を置く
「シャウラ。望み薄だけど、これだけ聞いとく。お前のお師様……本物の『賢者』のはずの、フリューゲルはどこにいる?」
「今、あーしの目の前に……って答えたら怒られそうな気がするッス! でも、答えちゃうッス!」
「そう言うと思ったよ」
希望は歩き出す力を与えてくれる。
だが塗り潰されたときの闇は、ずっと暗闇にいるよりも視界を黒く覆う。
「スバル、聞いて。そのことなんだけど、実は八方ふさがりってわけじゃないの」
「え?」
顔を向けると、エミリアは紫紺の瞳に確かな希望を宿していた。
「さっきまではほとんど何も話してくれなかったけど、今のあなたならもうちょっと詳しくお話してくれるんじゃない?」
「いいッスよ。あーしもお師様に凹まれてるの嫌ッスもん。それに長いこと一人きりだったんスから、お喋りしたいッス」
🔢 階層
階層には、それぞれ名前がある
「ここが塔の一番下。第六層『アステローペ』ッス。上にいくにつれて五層『ケラエノ』、四層『アルキオネ』って上がって、てっぺんが一層『マイア』ッス」
「階層ごとにいちいち名前付けてんのか。面倒臭くね?」
「名付けたのお師様ッスよ?」
「嫌いなセンスじゃねぇけど、今はその話するつもりねぇよ。それで?」
「五層『ケラエノ』がすぐ上、そこが外と繋がる出入り口のある層ッス。六層『アステローペ』はその下なんで、実は地下に当たるッス。下手打つと生き埋めになるんで、壁を壊そうなんてめったなことはしない方がいいッス」
「ちなみに壁や床だが、一見して石材のように見えるのに強度が尋常ではない。私はもちろん、エミリア様の魔法でも傷一つ付かないと先に言っておこうか」
🎯 下手人
あの白い光は、やはり彼女だ
「四層『アルキオネ』は出入り簡単な、あーしの住処みたいなもんス。結構、好き放題に汚しっ放しにしてるんで、じろじろ見られると恥ずかしいッス~」
「お師様、目がマジッス。怖いッス。……ふ、普段はここからあーしは砂丘の様子を見張ってるッス。で、塔に近付く奴は片っ端から撃つべし撃つべしッス!」
「やっぱり、アレはお前か」
砂丘でスバルを二度殺害し、チーム分断の一因にもなった白光。
その下手人は、やはりシャウラだ。
「アレのせいで、こっちはとんでもねぇ目に遭ったぞ、どうしてくれる」
「どうもこうも、あーしはお師様の指示に従ってただけッスし、それを言い出されるとここ何百年かやってたことにケチつけられてるだけッスよ~」
🔧 道具
ベアトリスの見方は、殺伐としている
その顔に悪気はないし、もっと言えば反省の色もない。
罪の意識に欠ける、というよりはそもそも罪の意識がないのだ。
「スバル、何を言っても無駄なのよ。これに罪の意識や罪悪感はないかしら。これはただ命じられただけ……道具に、使われ方を問い詰めても無意味なのよ」
(ノ*゚▽゚)ノ
「そーそー、あーしはお師様の道具ッス! チビッ子、いいこと言うッス!」
コロコロと変わる表情と機嫌、そして今の自分の在り方への理解。
おそらく、シャウラとは価値観が違う。会話がすれ違うのはそのためだろう。
「お前と話してると疲れるな」
「それ、前にもよく言われたッス! 久しぶりッス」
「そうか。俺もよく言われたよ、昔」
📚 書庫
三層から上に、書庫がある
「四層はお前の住処……住処って言い方もあれだな、居住空間。なら、その上は?」
「三層『タイゲタ』からは試験会場ッス。――書庫に入る権利を試すッスよ」
「……書庫?」
「書庫ッス。三層『タイゲタ』から上は試験と、それに対応した書庫があるッス。書庫に入る条件だけ満たせば、中の本は好きに読んだらいいッスよ」
「中の本って、何が書いてあるんだ?」
「さあ?」
(ノ゚Д゚)ノ
「さあ!?」
「あーし、本とか読めないッスし、塔を守れ以上のことは言われてないんスもん」
📖 大図書館
この塔の、本当の名前
「スバル、書庫の本、その内容は知識かしら」
「知識って……字面そのままの意味じゃなく?」
本に記されているのは大抵の場合、物語でなければ知識だ。
そして、ベアトリスが言いたいことは、そういう意味ではあるまい。
「ここは全知と呼ばれた『賢者』の記した知識の眠る場所、プレアデス監視塔は外に対する呼び名だそうなのよ」
「そッス。中にお師様が戻ってきたんなら、ここは元の役割に戻るッス。知りたいこと、気付きたいこと、何でも探せる大図書館――プレイアデスにッス」
「つまり、三層で初級。二層で中級。一層で上級の情報にアクセスできるようになると。試験ってのはクリアランス入手するための、資格試験ってことだな?」
「おー、さすがお師様ッス! あーしでも何言ってんのかいよいよわかんなくなってきたッス! でもたぶん、その噛み砕き方でOKッス!」
😰 手すりがない
手すりが、どこにもない
螺旋階段は塔の円周を回るように一行を上層へ運ぶ。
手すりなどがないために、高いところまでいくと相当に肝が冷える。
(゚д゚;)
「こわっ」
「スバル、もし怖いなら手を繋ぐ? まだ病み上がりなんだし、ふらふらして落っこちないとも限らないから……」
「ありがと、エミリアたん。でも、今は大丈夫。一応、階段の道幅あるから落っこちるってことはなさそうだし、逸る気持ちもあるからね」
「そう? でも、辛いと思ったらすぐに言ってね? いざとなったら私もスバルをおぶってあげるくらいできるから」
「そうか……それはちょっと、いざとなれねぇな」
🎒 おんぶ
最後尾は、なぜか背負っている
「やだあ、裸のお姉さんってばあんまり揺らさないでちょおだい」
「ええー、人の背中に乗ってるくせに偉そうなチビッ子ッス~」
「だってえ、疲れたんだものお。ずっと歩き通しだったしい、こんなに何段もある階段を上ったり下りたりしてられないわあ」
「だからって、なんであーしが運ばなきゃ……あ! 髪引っ張るんじゃないッス!」
メィリィが足が疲れたとごねたのが切っ掛けだ。
背負ってもいいと言い出したのはシャウラ本人なので、自薦に任せている。
⚠️ 警戒
ベアトリスが、小声で釘を刺す
「スバル、警戒は怠るんじゃないのよ。ああ見えて、いつ牙を剥くか知れたもんじゃないかしら」
「あいつが? あの感じから?」
「スバルがフリューゲルじゃないと知れたら、どう出るかわからない相手なのよ」
シャウラが友好的なのは、彼女がお師様=スバルと勘違いしているからだ。
そして、その繋がりが完全に勘違いだとスバルたちはわかっている。
「何の切っ掛けで崩れるかもわからない、ってことか」
「もしもあれが敵対した場合、しんどいことになるのは間違いないかしら。エミリアとあの騎士……ユリウスも加えて、ベティーとスバルの総掛かりしかないのよ」
あの光の速射性と狙いの正確性は尋常ではない。
そして、ケンタウロスが呆気なく蹂躙され、消し飛ばされるのはこの目で見た。
言いたくはないが、直接戦闘になればシャウラに勝てるビジョンが浮かばない。
🦂 スコーピオンテール
その呼び方には、こだわりがある
「お前がメィリィと微笑ましくポニーテールで遊んでるとこ悪いんだが……」
「ポニーテールじゃないッス、スコーピオンテールッス」
「スコーピオンテールッス」
自分のポニーテールの房を手で押さえて、ずいっと顔を前に出して。
「スコーピオンテール……」
(ノ゚Д゚)ノ
「わかったよ! なんだ、その拘り!」
💥 ヘルズ・スナイプ
あの攻撃には、名前がある
「お前、塔から俺たちに向かって攻撃仕掛けてきただろ? あれ、なんだったんだ?」
「塔にお邪魔虫を近付けないための狙撃、ヘルズ・スナイプッス」
「……なんて?」
「ヘルズ・スナイプッス」
「いやー、でも今になって思うとヘルズ・スナイプがお師様に当たんなくてよかったッスね。ディメンジョン・ゲートが解除されなかったら、お師様に当たるまで攻撃ぶん投げてたかもしんないッス」
「待て待て待て待て、新出の単語が多い! ディメンジョン?」
「ディメンジョン・ゲートッス。塔まで辿り着かせないための小細工ッスよ」
――あの『砂風』による空間歪曲のことだ、とスバルは理解する。
🧊 寒気
その理屈が、背筋を冷やす
「でもお、あんなの当たってたらお兄さん死んじゃったんじゃないのお? そおしたら怒るとか怒らないってお話じゃないと思うんだけどお」
「何を言うんスか、このチビッ子。あーしのお師様があんなんで死ぬわけないじゃないッスか。元々、お師様はなんか死ぬんだか死なないんだかわかんないわけわかんない人なんスから」
「でもでもお、砂蚯蚓ちゃんはいっぱい攻撃されて死んじゃったわけだしい……」
「蚯蚓も熊も知ったこっちゃないッスよ。あーしのお師様は死なない、これが大事なことッス。――もし死んでたら、お師様じゃないだけッスから」
へらっと笑い、シャウラは嬉しそうな目でスバルを見つめる。
その無邪気な笑顔を向けられて、スバルの背筋に寒気が走った。
彼女がフリューゲルに寄せる信頼は、根幹で強固に作り上げられた理想なのだ。
🐴 餓馬王
あの化け物には、名前があって、数がいる
「あと、砂宮に迎えにいくのが遅くなってすみませんでしたッス。お師様と別の組を塔に入れてる間に、お師様たちが奥に進んじゃったもんスから焦ったッス」
「ああ、いや、それは別に……っていうか、砂宮って言った?」
「そうッス。あそこはホント、危ないんで入んない方がいいッスよ。いくらお師様でも鍵も揃えずに近付くのは無謀なんで。餓馬王もうろついてるッスし」
「餓馬王……って、あの馬みたいな化け物か?」
「あれはお師様のいた頃はいなかったッスから、驚いたと思うッス。基本は砂宮の中でうろうろしてるだけなんで、砂宮にいかなきゃ出くわさないッスよ。たまに外に出てくる奴は容赦なくあーしがぶっ殺すんで」
「アレいっぱいいんの?」
「わんさかッス」
「餓馬王……私も知らない名前だわあ。見てみたいかもお」
(#゚д゚)
「やめろ! あれは子どもの見るもんじゃない……」
「やめといた方がいいと思うッス。餓馬王は角が何度でも生え変わるってコンセプトの魔獣ッスから、他の魔獣のお約束が通じないんスよ。見敵必殺、これ正義ッス」
🤝 約束
危害を、加えるな
「シャウラ、これは俺からのお願いだ。俺と、仲間たちに危害を加えるな」
「お師様の命令は、塔に近付く奴を攻撃しろ……だろ? 中に入った俺たちはその対象外だ。なら、もう攻撃する必要はない。危害を加えるな。絶対に」
重ねて、念を押すスバルの言葉にシャウラは目を細めた。
その色彩は、深く色濃い緑色をしている。
豊かな表情を隙間なく浮かべていた彼女が、初めて考え込むように笑みを消す。
「ん、OKッス。お師様の新しい命令として、あーしもきっちり覚えたッスよ~」
「いいのか?」
「いいも悪いもないッスよ。お師様の言うことなんスもん。それに別に難しいことじゃないッス。非暴力非服従ッス」
「命令に従うんだから服従はしてるじゃねぇか」
「体は自由にできたとしても、心までは奪わせないッス!」
「うぜぇ……!」
⭐ 七姉妹
六つでは、足りない
「マイア、エレクトラ、タイゲタ、アルキオネ、ケラエノ、アステローペ」
「……スバル?」
「上から順番に全部、このプレアデス監視塔……もとい、大図書館プレイアデスの階層の名前だよな?」
「はいッス~」
「じゃあ、メローペはどこにある?」
その質問に、シャウラは沈黙する。虚を突かれたことによる、驚きの沈黙だ。
「スバル、何を聞いたのよ? メローペって何かしら」
「とある七姉妹の最後の一人の名前。プレイアデスなら、七つないとおかしい」
「七層……じゃなければ、ゼロ層があるな」
「ゼロ層ッス。お師様が名付けたんスから、当たり前ッス。……ただ、お師様がいなくなってからできた場所なんで、どこにあるかは知らないはずッスけど」
🚪 ダメッス
そこだけは、拒まれる
「一層が上級なら、ゼロ層は超上級か? 入るには……」
「――ダメッスよ」
その口調の強さにスバルがちらと後ろを見ると、表情は変わらない。
笑みと、信頼の眼差しのままだ。ただ、寂しさが微かに目元にあるだけで。
「まだ、条件が満たされてないッス。お師様は道の途中で、あーしに会いに戻ってきてくれて、それで満足ッス。だから、ゼロ層はダメッス」
口調こそそれまでと変わらないが、代わりに奇妙なほど強固な壁を感じる声音だ。
食い下がることの危険性を、強くスバルに訴えかけてきていた。
「わかった。無茶なことは言わないでおく。さっきの約束だけ頼む」
「それは了解したッス~。守るッスよ~、超守るッスよ~」
🌍 同郷
その男は、たぶん同じところから来た
シャウラとの会話で浮き彫りになった、フリューゲルの異常性。
何のことはない。彼もまた、スバルと同じだ。
スバル、アル、ホーシン、そしてフリューゲル。
この世界にあるはずのない知識を持ち込み、これ見よがしに残す自己顕示欲。
もはや疑いの余地もなく、フリューゲルはスバルと同郷の人間だ。
「数百年前、か」
この異世界で何を思い、何を考え、何を目指し、何を求めて。
『賢者』の名前を放棄して、木を植えるような男は何を願って。
この世界で生き続けたのだろうかと、そんな風に思いながら。
🌟 おかえりなさい
シャウラが、頭を下げる
「お師様」
「ん?」
足を止めず、ちらっとそちらを振り向いただけ。
そのスバルをシャウラは見上げて、わずかにはにかむ。
「改めて、おかえりなさいッス、お師様。――『賢人』フリューゲルのご帰還、このシャウラ、心よりお待ち申し上げておりました。……ッス」
第六章20『シャウラ ≠ 賢者 = フリューゲル』終了。
スバル
メィリィ
ユリウス
ラム