第六章1
『竜車帰還路』
都市プリステラを出て、一行は東へ向かう。目指すのは、誰も踏破できていない砂丘だった。
🧭 世界図の東端へ
目的地は、アウグリア砂丘
都市プリステラを出た。
ナツキ・スバル一行は、一路、東へ。
目的地は世界図の東端。
そこにある、アウグリア砂丘。
あらゆる存在の踏破を拒む土地。
何百年も前から、魔獣の巣窟であり続けている。
曰く付き、という言葉では足りない。
⚠️ 待ち受けるもの
わかっているだけで、三つ
方向感覚を狂わせ、探索者の心を蝕む瘴気。
人の命を弄び、貪る魔獣の群れ。
そして――
世界の平穏を望み、監視塔へ近付くものを片っ端から成敗する『賢者』シャウラ。
(´-ω-`)
「わかってるだけで、自殺しにいくみたいなラインナップだな……」
事情を知る者たちの話では、あそこへ向かうのは二種類しかいない。
自殺志願者か、魔女教徒か。
いずれにせよ、正常な脳の機能を損なった連中だと。
だが、自分たちはそのどちらでもない。
死ぬつもりも、毛頭ない。
むしろ逆だ。
道のなくなった人々に、生かす道を与える。
その希望の種を手に入れるために、旅立った。
🚃 竜車の中
この面子で乗り合わせているのが、そもそも妙だ
揺れない竜車の、揺れを錯覚しながら。
「……それにしても、不思議なもんだ」
客室の全員の視線が、こちらを向いた。
視線の数は四つ。
スバルを含めて五人なので、全員が見たことになる。
(・o・)
「不思議って、何かあった?」
「いや、大したことじゃないよ、エミリアたん。ただまぁ、こうやって一つの竜車に仲良く乗り合わせる顔としちゃ、結構意外性があるなって思っただけ」
スバルの両隣はエミリアとベアトリス。
つまり身内だ。
ここは当たり前。
問題は、正面の二人である。
🧣 カララギ弁
アナスタシアも、同じことを思っていた
( ̄▽ ̄)
「まぁ、確かにそないに感じるんもおかしないかもしれんね。実際のとこ、うちもちょぉ意外に思うとるもん。ナツキくんが違和感あるんも当然やろね」
(´・ω・)
「……ああ、せやな」
力ないエセ関西弁で応じる。
アナスタシアは己の髪に触れ、意味ありげな目を隣へ向けた。
「もっとも、居心地の悪さだけの話なら、ユリウスさんには負けるかもわからんけど?」
⚜️ 忘れられた騎士
ユリウスは、もう受け止め終えている
( ̄ー ̄)
「これは手厳しい。ですが、ご安心ください。――私も騎士の身です。一晩あれば心の整理を付けるには十分。ましてや今回はすでに数日……決して、過日のような無様はさらさないとお約束しましょう」
「優雅やなぁ。なら、その言葉に期待しとこか」
一礼して答える態度は、以前の彼そのものだ。
当たり前といえば、当たり前のこと。
『暴食』の権能の被害にあったのは彼だ。
だがその影響を受けたのは、彼というより、彼以外の周りの人々に他ならない。
態度が変わるのは、彼より、彼の周りだ。
その反応を受けて、彼自身も動揺は隠せずにいた。
けれど、言葉の通り、無事に受け止め切ったらしい。
(-ω-;)
「……ったく、とんでもねぇ」
大したものだ、と声には出さずに称賛する。
🕰️ 覚えのある感覚
忘れられる側の痛みを、スバルは知っている
自分の存在だけが取り残され、周りから自分の記憶だけが失われる。
その感覚に、スバルも覚えがないわけではない。
『死に戻り』で時をさかのぼるナツキ・スバル。
この世界の誰も覚えていない世界の記憶が、確かにある。
一度、関係を築いた人間に忘れられる経験。
スバルの中でなら、最初のロズワール邸だ。
異世界に召還され。
王都でエミリアを助けるために奔走し。
その結果としてロズワール邸に招かれ。
四度の繰り返しを経て、五度目の世界を踏破した。
それまでの四つの世界の思い出は、もはやスバルの中にしか残っていない。
屋敷の人々に、見知らぬ人間扱いされた衝撃。
あの苦しみと悲しみは、決して薄れない。
🟣 変わらなかった一人
ベアトリスだけは、態度が変わらなかった
(・_・?)
「……なんなのかしら? スバル、なんで急にベティーの頭を撫で始めているのよ?」
(*´ω`*)
「気にすんな。あんとき、お前のおかげでずいぶん救われてたよなーって感慨深いだけだ。感謝感謝」
「わけわかんないかしら。それに髪が乱れるからやめ……なくてもいいけど、もうちょっと気を遣って撫でるのよ」
お尻半個分だけ席を詰めて、ベアトリスが頭を預けてくる。
屋敷の繰り返しの日々。
スバルへの態度が変わらなかったのは、ベアトリスだけだ。
『死に戻り』の起点より前に出会い、その後も彼女だけは接し方が変わらなかった。
それに救われたことは、ずっと彼女にも秘密だろう。
「そのあとは、エミリアたんに救われたんだけどな」
(・・?)
「――?」
優しさに、声に、態度に。
預けてくれた膝の温かさに救われて、スバルは今、ここにいる。
⚜️ 一人でやり遂げた
だからこそ、ユリウスの凄さがわかる
スバルは、これだけたくさんの手を借りた。
四度もやり直すほどに時間をかけた。
それでようやく、乗り越えた。
ユリウスは、それを一人で成し遂げている。
それとも、彼にも手を貸す誰かがいたのだろうか。
アナスタシアに忘れられ。
陣営の誰にも手を借りれず。
契約する準精霊との繋がりも絶たれて。
血縁である弟のことも思い出せない彼に、誰かが。
だとしたら、それはよかったなと、そう思った。
😑 優雅と典雅
見つめすぎて、逆に絡まれる
「先ほどから、じろじろと人の顔を見て……どうかしたのだろうか、スバル」
( ̄^ ̄)
「どうもしてねぇよ。なんか、優雅とか言われて典雅な感じに笑うお前がいけ好かないって思っただけ」
(´∀`)
「優雅に典雅、実に結構な響きだ。まさか君に称賛されるとは思わなかった。意外と嬉しい……いいや、それは言いすぎたな。まあ、普通だろうか?」
(#^ω^)
「褒めたつもりねぇけど、その言われ方は腹立つな!」
以前の調子で――否。
むしろ前より舌の滑りがよくなった風に言い返される。
スバルの方が、やり込められた。
プリステラで、弟の病室で。
その横顔に浮かべていた弱々しさが嘘のようだ。
あのときは勢いで、その面構えに色々と文句を付けた覚えがある。
完全に、黒歴史。
❄️ 感受性の不一致
エミリアには、仲良く見えている
(・∀・)
「スバルとユリウスって、仲良しなのね。ええと、今みたいになる前からこんな風に?」
(゚Д゚)
「エミリアたん、そりゃ誤解だよ。俺とこいつが仲いいとかあるわけないじゃん。俺の今の顔、見た? 自分で言うのもなんだけど、過去最高に目つき悪かったよ?」
「そう? そんなことないと思うけど……あ、今のは目つきの話じゃなくて、二人の仲のことね。スバルの目つきは、いつもとおんなじですごーく悪いと思うわ」
(ノ゚□゚)ノ
「いつもとおんなじですごーく悪い!?」
(*^ω^*)
「でも私、スバルの目つき好きよ。ホントのホント」
「あ、くそ、録音しといてあとで目つきの部分だけ削ってやりたかったなぁ、今の!」
「私の方から、彼の言葉を否定する余地がありません。実際、私と彼が親しくしている……というのは語弊があります。私としてはこれでも、譲歩しているつもりなのですが」
「譲る歩み寄るって、字面がすでに恩着せがましいんだよ。もっとへりくだれ。……その方がムカつきそうだな」
「困った言い分だ。どうしろと言うのでしょうね、彼は」
(・へ・)
「やっぱり、すごーく仲いいような……?」
「だから見ての通りだってば」
「え? じゃあ、やっぱり仲いいんじゃ……」
🦊 ガワだけ同じ
アナスタシアの中身は、彼女ではない
アナスタシアが、くすくすと口を押さえて笑う。
その反応に、ユリウスがふっと安堵するように唇を緩めた。
そんな仮初めの主従の関係が、裏側を知るスバルにはどうにもキナ臭い。
ここにいるアナスタシアは、本当の意味でのアナスタシア・ホーシンとは異なる。
ガワだけ同じ、偽物だ。
現在、中身は人工精霊であるエキドナ。
通称、襟ドナに成り代わられている。
体を乗っ取る意思はない、と当人は言う。
どこまで信用できるものかは、怪しいところだ。
事情を知るスバルは、エミリアやユリウスに悟られないようにしながら。
警戒だけは、欠かさないようにしていた。
🟣 気付くのは、こっち
ベアトリスにだけは、話してある
( ̄ヘ ̄)
「……スバル、いい加減にするのよ」
沈黙の間も、ずっと頭を撫で続けられていた少女の髪は乱れている。
可愛い顔が、仏頂面だ。
(゚д゚)!
「おお!? 悪い、ベア子! お前の可愛い格好が台無しになって……こんなブチャイクに」
(*`ω´)
「ベティーの可愛さは髪型一つで乱れたりしないかしら! そんなことより、怖い顔になってるのよ」
「そんな無性に心配な顔しても意味なんてないかしら。……ベティーが気にしておくのよ。何かあれば、スバルよりよっぽど早く気付くかしら」
「……おう」
スバル以外に、襟ドナとアナスタシアの成り代わりを知っているのがベアトリスだ。
本来、スバルは事実を秘することを約束した。
無用な混乱を避けるため。
襟ドナがアナスタシアの体を奪うつもりはない、という主張のため。
その二つが理由だった。
だが、何かあってからでは遅い。
ベアトリスにだけは、それを伝えてある。
同じ人工精霊であり、同じ『魔女』エキドナと関係がある二人だ。
何か企むようであれば、ベアトリスが察してくれることだろう。
もっとも、ベアトリスの心情を考えれば、あまりエキドナと関わらせるのは得策とは思えなかったが。
(´ω`)
「余計な気を回すより、スバルはスバルらしく、いつも通りに誰かれ構わず助けを求めてた方がいいのよ。でも、最初にベティーに言うかしら。今回は褒めておくのよ」
と、返されてしまったので、それはそれだ。
🏰 最初の目的地
ロズワール邸へ寄るのは、寄り道ではない
「――見えてきたわ」
竜車の窓から先を眺めるエミリア。
スバルにも、窓の外の景色が見慣れたものになりつつあるのがわかった。
「懐かしの道だ。もうすぐ、ロズワール邸だな」
一行の目的地は、アウグリア砂丘。
『賢者』シャウラとの話し合いを求めて向かう。
だがその道行きの準備と、長旅の中継地点として。
ロズワール邸へ立ち寄ることで話がまとまっていた。
都市プリステラでの出来事。
『賢者』との話し合い。
屋敷にいるであろう陣営の仲間と相談したいことが、山ほどある。
それに、それに――だ。
「寄り道ってだけの話じゃ、ないからな」
大きな目で見れば、小さな世界のささやかな意味が。
だが、ナツキ・スバルという小さな人間の目で見れば、大きな可能性を持った意味が。
まだ見えてこないロズワール邸を幻視するように、目を細める。
その姿に、竜車の中の四者がそれぞれ目を向けていた。
視線の色は、感情は、様々だ。
そのいずれの視線にも、気付く余裕がスバルにはなかった。
🧵 出迎え
ペトラが、勢いのまま飛びついてくる
ロズワール邸へ竜車が到着したのは、それから一時間後の正午過ぎ。
都市プリステラを発ってから、十日ばかりの長い移動がいったん終わる。
\(^o^)/
「スバル!」
(゚д゚;)
「おお、ペトラって、うおわ!?」
屋敷の方からパタパタと駆けてきた小さなメイドが、そのままの勢いで飛びついてきた。
後ずさりながら、なんとか受け止める。
「いきなりだとびっくりするじゃねぇか、ペトラ。一ヶ月近く留守にしてたけど、元気にしてたか?」
(´・ω・`)
「わたしは見た通り、元気にしてたよ? でも、スバル……様の方は大変だったんでしょ? 一昨日に手紙が届いて、ずっと心配してたんだから。またいっぱいケガしたんでしょ? 痛いの我慢してませんか?」
(≧∀≦)
「こしょばいこしょばい」
ぺたぺたと体を触って確かめられる。
「ほれ、ペトラ。ちゃんとお屋敷のメイドとしての役割を果たせ。じゃないと、ラムやらフレデリカやらに怒られるぞ」
(・ω・)
「……はい。あとでお話、聞かせてね」
戻って早々、すっかり信用は損ねてしまったらしい。
結晶石を譲ってもらう、という話し合いに出ていった先で、都市全体を巻き込む騒ぎになった。
心配も、仕方ない。
🧵 一年ちょっとのメイド
ペトラの口上に、客人が感心する
( ̄▽ ̄)ゞ
「お客様、長旅お疲れさまでした。当家でメイドをしております、ペトラ・レイテと申します。これよりお屋敷へご案内させていただきます」
堂に入った仕草だ。
ユリウスと、彼に手を借りて竜車を降りたアナスタシアも感心した顔。
心なしかエミリアとベアトリスは、自慢げな顔つきにも見える。
「小さいのにしゃんとした子ぉやね。しっかり教育が行き届いてるわぁ」
「確かに、スバルに飛びついていた態度とは別人のようでしたね」
(//∇//)
「――お恥ずかしいところを」
( ̄ー ̄)
「なるほど……ますます、君が『幼女使い』ともてはやされる所以を痛感させられる」
( ̄皿 ̄#)
「言っとくけど、ペトラは幼女ってほど小さくねぇし、百歩譲っても俺が使う幼女はベア子だけだから。勘違いすんな」
(¬_¬)
「ベティーも、使われるというほどスバルに都合よく働いてやってるつもりはないかしら。スバルも、そこは勘違いするんじゃないのよ」
軽口に辛口で応じたら、さらに辛口でたしなめられた。
📏 一ヶ月ぶんの差
ペトラの背が伸びていて、
ベアトリスが愕然とする
ため息をついたベアトリスがペトラの下へ。
並んで、メイド服の裾をちょこんと摘まむと。
(・_・;)
「それにほら、ベティーとペトラの間にそんなに差なんてないかし……待つかしら。ペトラ、ちょっと背が伸びてる気がするのよ。髪もちょっと伸びてるかしら……!」
( ̄▽ ̄)
「だって一ヶ月経ったし、わたしも今は成長期だもん。背も伸びるし、髪だって切らなかったら伸びるよ。ベアトリスちゃんは小さいままだね」
Σ(゚д゚)
「な、なんてことなのよ……!」
愕然となるベアトリスを、笑ったペトラがぎゅーっと抱きしめる。
むくれ顔を十分に抱擁して、それから「では、ご案内します」と歩き出した。
🐴 十日間の冷戦
パトラッシュが、まだ怒っている
「んじゃ、ようやく屋敷に……んが」
後ろ襟が誰かの手に掴まれる。
掴んだのは、まさかのエミリアだ。
(-ω-)
「スバル、パトラッシュが不満そう」
「む……わがままなやっちゃなぁ」
竜車を引いて走った二頭の地竜。
その内、漆黒の美しい地竜がスバルをやけに刺々しい目で睨みつけている。
スバルの愛竜、パトラッシュだ。
視線を合わせようとすると、露骨に目を逸らし、不満げに小さく鳴く。
「ホントに、十日もあったのに仲直りできなかったわね」
(-ω-;)
「わかるけど、今回は真面目に俺のせいじゃねぇと思うんだよなぁ……」
この塩対応は、都市プリステラを出発したときから――否、その少し前まで遡る。
魔女教防衛戦の終了後、地竜の厩舎に迎えにいったら、すでに機嫌が悪かった。
オットーが負傷離脱でいなかったため、言葉を交わせていない。
ただ、付き合いも長いのだ。
何に対して怒っているのかも、そろそろわかろうというもの。
💥 一撃
答えを外すと、尾が飛んでくる
「そりゃ、騒ぎの中でほったらかしにしといて、それで心細い思いをしてたってのはわかるんだけど……ごふぁ!?」
Σ(゚д゚)
「スバル!?」
外れ、とでも言いたげに尾をスイング。
――バシィッ。
直撃を受けたスバルが、土塗れになる。
(´;ω;`)
「ま、まさか……レグルスの攻撃も避けきった俺が避けきれないとは……」
「大丈夫? パトラッシュ、また急に尾をブンブンし始めたけど、これって正解が言えなかったらまたおんなじことするつもりでいるんじゃない?」
見れば、確かに長い尾を振り回している。
その先端で風を切り刻み、威嚇するかのように。
ワンミスごとに威力倍、とでも言いたげだ。
迂闊な回答はできないと、スバルの喉が引きつった。
⚜️ 目を見ればわかる
ユリウスが、怒りの中身を読み解く
「そんな風に悩まずとも、君の地竜は君への思いやりに溢れているよ」
( ̄▽ ̄;)
「ホントに? 俺、こんなに土に塗れてるけど? これ思いやり?」
「親愛の証は目を見ればわかるだろう? 情の深い地竜だ。大方、あの騒ぎの最中に君の助けになれなかったこと、君に助けを求められなかったことを怒っているのだろう。それは君への怒りより、自憤の方が強いかもしれないな」
怒っているのは、置いていかれたことではない。
助けを求められなかったこと、そのものだ。
(*ノωノ)
「なんなのそれ、どんだけヒロイン力上げてくるの、やめろよ」
どこまで正答かは知れない。
だが少なくとも、尾の素振りがその言葉に止まったのは確かだ。
(*´ω`*)
「なんだか、そう聞いてから見ると、照れてるように見えるわね」
「エミリアたんも? 俺も。胸がときめくから、たまににしてくれ、パトラッシュ」
おっかなびっくり手を伸ばすと、パトラッシュがようやく頭を下げた。
固い鱗に覆われた体に、触らせてくれる。
十日もあった冷戦は、どうにかこれで終わったと見てよさそうだった。
🌸 背後から
ラムが、石像を作りにくる
(・~・)
「もういい? もう大丈夫?」
案内を申し付けられて出てきて、それなのにこれだけ時間を食った。
「早く戻らないと、ラム姉様にまた怒られて……」
(¬_¬)
「――その心配ができるなら、あともう少し努力が足りなかったわね」
Σ(゚д゚)
「ぴゃ――!?」
屋敷の方からやってくるのは、桃色の髪のメイド。
疑いようも見間違えようもなく、ラムである。
「最近はペトラも仕事ぶりが上達したと思っていたのに、ようやっと認められると思ったところでこの体たらく……ラムは本当に残念だわ」
(´・ω・`)
「ご、ごめんなさい、ラム姉様……その、お仕事、認めてくれそうだったの?」
「ええ。ラムより料理もおいしいし、ラムより掃除も気が利くし、ラムより洗濯も上手になったし、ラムより早寝早起きだし、認めそうになっていたわ」
(ノ゚□゚)ノ
「そこはお前が自分に疑問を持てよ!」
メイド歴一年ちょっとの少女に、ベテランメイドがどれだけ負けるのか。
ペトラの呑み込みの良さを鑑みても、ハードルが低すぎて話にならない。
🌸 期待と自信だけ
ラムは、自分を省みない
( ̄ω ̄)
「自分に疑問なんて持ってどうするの? ラムが自分に持つのは期待と自信だけよ」
「ラムのそういうとこだけは、本当に尊敬に値すると常々思う」
揺るがなさは、見習うべき点がある。
ただ当人にはもう少し、自分を省みてほしいとも思うが。
「それをしたら、ラムがラムじゃないって気分になるか」
「ゾッとする話ね。それに、いつまでもこんなところにお客様を放置しておくわけにもいかないでしょう。早く屋敷に入るわよ」
さすがに入口で時間を食い過ぎだ。
これ以上留まっていると、しまいにはフレデリカやロズワールまで顔を出しかねない。
王選候補者やら辺境伯やらが揃って、何をしているのかという話だ。
💀 いい声で言うな
ラムが、二人を勝手に殺す
「ロズワールはちゃんと屋敷にいてくれてる?」
「幸い、手紙が届いた時点でお屋敷に御滞在でしたので、そのまま残っておいでです。プリステラのことの概要は手紙で……詳しくは積もる話もおありでしょう」
「そうね、ちょっと色々あったから……」
(-人-)
「出かけるときと、人員が様変わりしていますものね。――ガーフとオットーは死にましたか」
(ノ゚Д゚)ノ
「死なすなよ! 死んでねぇよ! 負傷離脱で帰るの遅れてるだけだよ!」
「余裕のない男は底が知れるわよ。特にバルスの底には穴が開いていて中身がこぼれ出しているんだから気をつけなさい。底が知れて中身が空なんて、最悪だわ」
(´;ω;`)
「ズバッと傷付くからやめてくれ! それに、そんなことより……」
🗝️ 手紙の後半
頼んでおいた二つの準備は、できている
出発に先駆けて、プリステラから屋敷へ送った手紙。
その内容が共有されているなら、この帰還がただの帰還でないこともわかっているはずだ。
手紙の後半の内容を確認しようと、スバルが言葉を選ぶ。
ラムがそれに先んじて、指を立てた。
「言ったでしょう、安心なさい。ロズワール様は御在宅……それから、『眠り姫』も『座敷牢』も、どちらも準備は整っているわ。もっとも」
赤い舌先が、桃色の唇をどこか嫣然とした仕草で湿らせる。
( ̄ー ̄)
「どっちの準備も、ラムじゃなくてフレデリカとペトラの仕事だったけれどね」
( ̄ω ̄;)
「なんでそこでお前が自慢顔すんの?」
一ヶ月ぶりの再会であっても、まぁ、彼女はそんなもんである。
第六章1『竜車帰還路』終了。
スバル