狼の国を読む WEB版・初見向け解説
20話収録

第七章15

『守りたいモノ』

森を出た一行は、城郭都市グァラルを目指して平原を進む。

平原で黒鹿を仕留めたホーリィたちと、レムを背負って疲れ切ったスバル

🏹 ズドン!

「お肉、仕留めたノー!」

小さな森のそば。

強烈な音と一緒に、黒鹿の群れが一斉に逃げ出す。

残った一頭の胸には――

太い矢が、一撃。

ホーリィ

(ノ´▽`)ノ♪

「お肉、仕留めたノー!」

鹿ではなく、最初から「肉」扱い。

クーナ

(¬_¬)

「せめて黒鹿って言えシ……」

元気なホーリィホーリィと、ずっとツッコミ役のクーナクーナ。

一方、その後ろでは。

スバル

(;´Д`)

滝のような汗。膝はガクガク。

レムレムを背負ったまま、意地だけで歩いていた。

レム「……意地っ張り」

聞こえない声で、レムが小さく呟く。

休憩中、兄弟がいたのかとスバルへ尋ねるレム

木陰の休憩

「私には、兄弟がいたんでしょうか」

背負子を下ろし、ようやく休憩。

スバル「俺が長男じゃなかったら、弱音を吐いてた」

よく分からない長男理論を語るスバルスバル。

レム「あなた、一人っ子なんでしょう?」

(;゚Д゚)

自分で話を壊していく。

でも、その雑談から。

レム「自分の前や後に生まれた家族……私にも?」

スバルスバルの動きが止まる。

記憶を失ったレムレムが、自分の過去を尋ねた。

これまでは「ここはどこ」「あなたは誰」という警戒の質問ばかり。

知りたいという気持ちで聞いたのは、これが初めてだった。

スバルスバルには、大きな一歩に見える。

互いを見定めるように話すスバルとレム

薄氷の上に

薄紙が、一枚

レム「あなたが、どういう人なのか分からないんです」

レムレムが感じる、恐ろしく不吉な気配。

それなのに、実際のスバルスバルは自分を守り、無茶をして背負っている。

感じるものと、見たものが一致しない。

だから今、レムレムはスバルスバルを真剣に見定めようとしている。

レム「邪悪の化身とは、薄紙一枚を挟んでもいいと思えるようになりました」

スバル

(゚∀゚)

評価はものすごく低い。

でも、ゼロではなくなった。

見えない握手を、スバルスバルは全力で握り返す。

レムレムが過去を聞く準備は、まだできていない。

スバルスバルは急かさず、待つと約束する。

火付け石で焚火を起こすスバルと、見守るホーリィとクーナ

🔥 火花が散る

スバル、火を起こす

解体を終えたホーリィホーリィたちが戻ってくる。

作業の大半をやったのはクーナクーナ。

褒められるのは、満面の笑顔のホーリィホーリィ。

クーナ「なんデ、全部アタイが……」

(╬¬_¬)

いつもの構図。

火付け石を借りたスバルスバルは、四回目で着火に成功。

スバル「ついた!」

ホーリィ「よくできたノー!」

小さな火。でも、異国で生きるための新しい一歩。

狩りでは、クーナクーナが獲物を見つけ、ホーリィホーリィが射抜く。

目のいいクーナクーナは、意外にも弓が苦手。

森でスバルスバルを射殺した『狩人』の正体は、まだ分からない。

シュドラクの誰かだった可能性はあるが、この時点では断定できない。

じゃれ合うホーリィとクーナを、スバルとレムが見守る

姉妹みたいな二人

「羨ましいです」

ホーリィホーリィとクーナクーナは、同じ日に生まれた隣人同士。

ホーリィ「姉妹みたいなものなノー」

クーナ「アンタみたいな姉妹、お断りだシ!」

怒る。揺さぶる。全然動かない。

ホーリィホーリィは笑い、クーナクーナだけが疲れていく。

(;¬_¬)

でも、離れようとはしない。

その二人を見て、レムレムの目尻が少し下がる。

レム「あけすけに言い合える相手がいて……羨ましいです」

記憶のないレムレムには、誰もが暗闇から現れた他人。

心から安心できる関係を、一つも思い出せない。

それを聞いたスバルスバルは――

一つだけ、黙っていられなくなる。

双子の姉がいることをレムへ伝えるスバルと、見守るルイ

伝えたかったこと

「お前には、お姉さんがいる」

スバル「お前を心底大事に思ってる、双子の姉がいるんだ」

ラムラム。

遠くルグニカで、今も妹を案じているはずの姉。

スバルスバルは、目を閉じれば双子の共感覚で感じられるかもしれないと教える。

レムレムは胸に手を当て、見知らぬ半身へ意識を伸ばす。

レム「……何も、感じられません」

距離のせいか。記憶がなく、相手を思い描けないせいか。

理由は、この時点では分からない。

慰めようとしたスバルスバルより先に、ルイルイがレムレムの手へ自分の手を重ねる。

レム「ありがとうございます。大丈夫ですよ」

スバル

(╬゚Д゚)

「やっぱり、お前は俺の敵ってことか……!」

大人げない。レムレムにも即座に怒られる。

その横で、肉を焼く二人は――

ホーリィ「焼けたノー!」 クーナ「まだ生焼けダ!!」

それから四日。

一行は、城郭都市グァラルへ到着する。

高い城壁の前で、ホーリィホーリィとクーナクーナの護衛は終わり。

別れ際、二人は白い包みをスバルスバルへ渡す。

中身は――『血命の儀』で折った、エルギーナの巨大な角。

帰国の路銀にするための、シュドラクからの贈り物。

彼女たちは重い角を、何も言わず四日間運んでいた。

戦いへ戻る二人を見て、スバルスバルの心が揺れる。

クーナ「馬鹿なこと考えんじゃねーゾ」

「守りてーもんを守るために戦えヨ。アタイたちモ、おんなじダ」

クーナクーナたちはシュドラクを守る。

スバルスバルはレムレムたちを守り、帰る道を進む。

離れるのは、逃げることではない。

スバル「二人とも、本当にありがとう!」

ルイルイもホーリィホーリィのお腹へしがみつき、なかなか離れない。

そして再び、スバルスバル、レムレム、ルイルイの三人になる。

今度は、三人が同じ方向を向いている。

三人は並んで、グァラルの門をくぐった。

第七章15『守りたいモノ』終了。

第七章15『守りたいモノ』終了。